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NVNニュース 第6号 (平成19年3月21日発行)
日蓮宗ビハーラ・ネットワーク
Nichiren-syu Vihara Network
NVN事務局 栃木県栃木市嘉右衛門町11-21 妙唱寺内
〒328-0072 Tel 0282-22-3720 Fax 0282-23-6733
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平成18年6月2日(金)午後1時〜1時45分、日蓮宗宗務院4階第4研修室に於いて、日蓮宗ビハーラ・ネットワーク(NVN)平成18年度総会が開催され、NVN会員26名が出席されました。
| 柴田代表 |
玄題三唱の後、柴田代表が、ハワイ開教時報の記事を紹介され、「ビハーラ活動をしていくことが、仏教の本当の姿であろうと思います」と挨拶されました。
| 古河副代表 |
続いて、事務局一任にて古河良晧師が議長となり議事が進行され、平成17年度活動報告、平成17年度決算報告、平成18年度活動計画案、平成18年度予算案が承認されました。
平成18年度予算案の中で、宗務院助成金が前年度予算よりもかなり多いようであるが、どうしてか、という質問がなされました。これは、NVNが社教会に加盟したことと、社教会の各会の事務を各会に任せることになったため、社教会各会への補助金が増やされたために、予算計上も多くなったと、近澤事務局長から回答されました。
| 近澤事務局長 |
続いて、近澤事務局長より、2項目の規約改正案が提案されました。
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第5条4項 | 本会に会計監査2名を置く。会計監査は会員の中から総会において選出する。 | |
第5条5項 | 会計監査の任期は3年とする。
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併せて、会計監査選出の事務局案として、会員の中から、関妙淳師と持田貫信師が推薦されました。
規約改正案、会計監査選出ともに、拍手でもって了承されました。
また、昨年の総会に於いて、会費未納者に対して何か対策をしているのか、というご意見があり、今年度の総会案内時に、昨年度分会費納入未確認の会員の方々には、昨年度分会費納入未確認の旨を文書にてお知らせし、今年度分と併せて、昨年度分会費も納入をお願い致しました。過年度分会費未納の会員の方は、今年度と併せて納入頂けますよう、重ねてよろしくお願い致します。
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| 岩田親靜師 |
総会に続いて、今年初めて、ビハーラ活動事例報告が行われました。今回は、千葉市本休寺住職、岩田親靜師に、千葉県立がんセンターでのボランティア活動を報告していただきました。
岩田師は、千葉県立がんセンターに於ける「光の会」の活動内容について話をされ、何故ボランティアを始めようと思ったのか、ボランティアをして思うことについて話をされました。
そして、岩田師は、僧侶が病院ボランティアを行う意義として、「生と死に寄り添うことの難しさを知ることも可能になると思われる」と話され、「ボランティアが利他行であるとするならば、『自利即利他』『自利利他円満』のまず『自利』があって『利他』なのではないかと感じているのです。ボランティアには、見返りがないのではないと思います。体験や人間関係という金銭に還元できないものを頂いていると思えるのです。」と語られました。
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| 奥田正叡師 |
活動報告に続いては、総会記念講演が行われました。今回は、NVN世話人でもある京都市常照寺住職、奥田正叡師に、「綱脇龍妙上人と身延深敬園」と題して講演をしていただきました。
その中で、奥田師は次のように述べられました。身延深敬園設立の思想背景として、「綱脇龍妙師には、3つの誓願がありました。第1は出家した以上法華経的色彩の強い宗教家として精進すること。第2は宗門改革をすること。第3はいかに困難を重ねても日本のハンセン病救済に奮闘することでした。」
また、綱脇龍妙上人の宗教観として、「常々人間の生き方は不軽菩薩であると語り、不軽品の身読を日課としていました。深敬園設立後も終生、社会に対する法華経の布教を忘れていませんでした。」という、綱脇龍妙師の長女美智女史の言葉を紹介されました。
| 奥田師の講演内容は、宗報平成18年8月号(第221号、改訂第53号)に掲載されています。 |
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『一口医学メモ』
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「うつ病の正しい理解を」
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柴田寛彦
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うつ病については、未だに誤解が多いように思います。例えば、「わがままな性格だから」、「もうちょっと気力を振りしぼれば何とかなる」とか、「周囲に感謝する謙虚さがあれば」、「こせこせしないで気持ちを大らかにすれば治る」というような、原因を本人の性格や努力不足といった個人的なことに押し付けたり、精神論で解決を促すような考え方です。こうした誤解は、うつ状態にある人の悩みを更に深めることになり、治療の妨げにもなりかねません。
−こころがカゼをひく−
失敗をしたときや心配ごとが重なったときなどに、気持ちが落ち込んで悲観的になってしまうことは誰にでもあることです。抑うつした気分が短期間で回復できればいいのですが、時には長引いて生活に支障が出てしまうこともあります。これを「うつ状態」あるいは「うつ病」といいます。心がカゼをひいてしまったのです。カゼはゆっくり休養をとって適切に処置すれば完全に治ります。同じように、うつ病も適切に対応すれば必ず回復します。
−うつ病の症状−
うつ病の症状には、次のようなものがあります。
1) | 抑うつ気分:憂うつ感、悲哀感、興味や喜びの感情の喪失など。
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2) | 意欲や行動の障害:何をするにもおっくう、意欲の低下、集中力の低下、決断力の低下、性欲の低下、行動の遅滞など、意欲や行動の障害。
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3) | 思考障害:考えが進まない、まとまらないなどの思考の抑制や自分、社会、将来に対しての悲観的な考え方が多くなる。
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4) | 身体症状:全身倦怠感、食欲不振、不眠、頭痛、肩こり、めまい感、性欲減退、耳鳴り、口渇、胸部圧迫感、吐きけ、腹痛、便通異常、腰痛、手足のしびれなど。
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5) | 日内変動、季節変動:朝方調子が悪く、夕方には元気がでてくるという日内変動。1年〜数年の周期で反復したり、季節的に春と秋に悪くなるケースが多い。
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−うつ病の原因と治療−
抑うつ気分になる原因について、最近では次のように考えられています。脳の中では、考えたり行動したりするときに神経細胞どうしがさかんに情報をやり取りします。その時にセロトニンやノルアドレナリンといった化学物質が神経伝達物質として働いています。これらの化学物質が何らかの原因で少なくなったり、働きが弱くなってしまうと、うつ状態を招きます。ですから、治療の原則は、少なくなってしまった化学物質が再び増えるような方法を講じること(休養)と、不足分を補うこと(服薬)です。
−「ガンバレ」は禁句−
治療の原則は「休養」と「服薬」です。少なくなってしまった脳内の化学物質が再び増えるように、十分に休養することが大原則です。落ち込んだ人に、「がんばって」とか「気晴らしに旅行にでも行ったら」などと言いがちですが、これは言ってはならない禁句です。
最近は薬がずいぶん改良されてきました。医師の指示で、きちんと服薬すれば、思いのほか良くなるものです。
うつ状態にある人のつらい気持ちを理解し、専門家のアドバイスに委ねながら、相談相手としてそばにそっと寄り添ってあげることが、ビハーラ精神と言えるでしょう。
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昨年度まで伝道部所管で行われていましたビハーラ活動講習会(上級編)が、平成18年度からNVN主催で行われることとなりました。
初めてのNVN主催となる今回は、平成18年度ビハーラ活動実践講座として、平成19年2月6日(火)に、日蓮宗宗務院4階第1・2研修室及び5階講堂で行われました。
今回の内容は、以下のものとなりました。
第1講 「自死対策とビハーラ」(90分)
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秋田県 本澄寺住職 柴田寛彦師
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第2講 「看護・介護の現場から」(90分)
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愛知県 道心寺修徒 林 妙和師
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第3講 「ビハーラ活動報告」(30分)
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千葉県 本休寺住職 岩田親淨師
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質疑応答(30分)
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質疑応答の後、閉講式が行われ、NVN柴田寛彦代表から、「ビハーラ活動というと新しいことのような感じがするけれども、本来、僧侶がしなければならない活動です」と挨拶されました。
また、今回から、日蓮宗教師だけではなく、寺庭婦人や学生にも声をかけたことによって、寺庭婦人4名、学生1名の参加がありました。
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| 柴田寛彦師 |
第1講目のNVN代表柴田寛彦師による「自死対策とビハーラ」では、夫を自殺で亡くした妻の手記の紹介から始まり、自殺死亡者や自殺死亡率の年次推移、年次別自殺者数、年齢別自殺者数の推移、原因・動機別自殺者の推移、等をグラフを使って説明されました。自死の理由は健康問題というのが一番多く、不況になることによって経済的に追い詰められたためというのが多くあるとのことでした。病気になっても安心していられるような社会にすれば病気を原因とした自殺を減らせる可能性があると言われました。
自死予防には、0次予防から3次予防までのいろいろなレベルで考えていかなければならないことや、自殺防止対策有識者懇談会報告の「自殺予防に向けての提言」を取り上げ、自殺対策基本法によって国を挙げて自殺対策に取り組むことについて説明されました。
その後、原始仏典に於いて自殺をどのように見ているかを紹介し、日蓮聖人の御遺文をあげて、仏教的観点から、なぜ心が自殺におもむくのかを考察されました。そして、私たち日蓮宗教師が地涌の菩薩の自覚をもって但行礼拝を行うことで、自殺予防ができるのではないかと言われました。
また、自殺予防の十箇条や、うつ病発見のためのKEY QUESTIONを紹介し、当てはまる人が居た場合、その人の気持ちを受け止めて聞いてあげることや、どういう人が危険なのかということのわかる目をもっていくことが我々に求められていると言われました。
また、実際の例を参考にしながら、こういう時には、こうした方が良いということをお互いに勉強し合うということも大切であると結ばれました。
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第2講目の「看護・介護の現場から」では、NVN世話人林妙和師が、「高齢者と家族を支えるために−事例を通して考える」と題して、講演されました。
高齢者と家族を支えるために、加齢に伴う心と身体の変化がどういうことかということについて理解を深めてもらいたいと、看護・介護の現場の事例を写真を交えて紹介し、具体的に解説されました。事例を通して、高齢者や家族の抱える問題について説明をし、「ケアの大切さ」「生活の質の向上」「支援のあり方」などについて具体的に話をされました。
| 高齢者疑似体験 |
また、「ひとり一人生きた歴史や、家族関係があり、現実が受け入れられない葛藤や苦しみも様々です。身体的・精神的苦しみを取り除くためには、第一に、その人を知り、信頼関係を築くことが必要です。小さな活動が長い目で見れば花咲き実になっていきます。まずは活動を始めてみましょう」と語られました。
その後、参加者に、加齢に対する理解をしてもらうために、高齢者疑似体験装具を身につけて、高齢者の日常生活の課題を実感していただきました。
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第3講目の「ビハーラ活動報告」では、NVN会員の岩田親靜師が、現在活動されているビハーラ活動についての報告をされました。
岩田師は、現在、仏教情報センター電話相談員、NVNニュース第5号に掲載された病院慰問、病院ボランティア(千葉県がんセンター「光の会」)の活動をされているとのこと。
何故ボランティアを始めたか、ボランティアをして思うこと、僧侶が病院ボランティアを行う意義、ボランティアを行う上での問題点、について話をされ、最後に、松本圭介という浄土真宗の在家出身の僧侶が書いたブログ『おぼうさん、はじめました』の一節を紹介されました。「僧侶として仏教の死の概念をいくら語ってもかまわない。また語る言葉に、『いのちの大切さ』がこめられていてもいい。ただ、その僧侶の内から出てくる血肉化された自分の言葉でないと、いっさいの人々の耳に届かないことは充分に承知してほしい。」 そして、「これは実に耳の痛い言葉です。自分自身にこの言葉に対する回答を模索していますし、模索しつづけるように思います」と結ばれました。
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平成17年度ビハーラ活動講習会(上級編)は、平成18年3月25日(火)日蓮宗宗務院4階第4研修室に於いて、「安らかな死の受容」〜死にゆく人にいかに安心をもたらすか〜というテーマで開催されました。
講師として、NVN世話人でもある長野県大法寺住職藤塚義誠師と、日の出ヶ丘病院ボランティアコーディネーター今井俊子氏にお越しいただき、それぞれ、「死に向き合うときに」 「死は生きること」と題して講演していただきました。
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| 藤塚義誠師 |
藤塚師は、最初に問題提起として、「死の考え方、救いの考え方の変化に、宗教は対応しえなくなっている。三宝、とりわけ僧は無力に思える」(「仏教」季刊bU“死をみつめる”)「臨床医があるんだから臨床僧があったっていい。」(早川一光 堀川病院顧問・医の心を求め実践する会会長、「大法輪」第55巻第3号)を紹介されました。
そして、死にゆく人の心理、看護の心五つ、死を安らかに迎えるための五ヶ条、中年以降の六つの課題、“受容”は“あきらめ”と混同されがちだが全く別物である、仏教者屑籠論、スピリチュアル(霊的)の特徴、スピリチュアリティ、スピリチュアルケア、スピリチュアルペインの「しるし」、スピリチュアルケアの進め方、成果として得られるもの、スピリチュアルケアは「人格と人格のふれ合い」、援助者の留意点、看取りの心得と作法17ヵ条、等について話されました。
そして、釈尊の「病む者を看取るは、われを看取るなり。いささかも異なることあることなし」の聖語で結びとされました。
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| 今井俊子氏 |
今井俊子氏は、「死は生きること」と題して、患者さんの言葉から得たボランティア活動の広がり、ホスピス病棟の患者さんを通して見えてくるものについて、話されました。
今井氏は、まず、入院中に聞こえてきた言葉「病院は格子なき牢獄だよ」から、入院患者さんの思いを叶えて差し上げたいという思いから、医療、苦痛、受容、人の死、について考え、一人では叶えることが出来ないので、ボランティアコーディネータとして共に歩くことを選択されたということを話されました。
そして、ホスピス病棟とボランティアについて説明をされ、患者さんが生きている実感を得られるためには、「時間存在」「関係存在」「自立存在」が認められることが必要であり、ボランティアの存在は、「私は、あなたのそばにいます」ということであると話されました。
ボランティア活動の喜びと学びは、貢献をしながら、ボランティア自身が癒される、生き方の模索が出来る、という「総合扶助」に魅力があると語られました。
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| 庵谷行亨先生 |
平成18年11月16日(木)、日蓮宗宗務院4階第4研修室に於いて、第3回「心といのちの講座」が開催されました。立正大学仏教学部教授の庵谷行亨先生を講師にお迎えし、「日蓮聖人の輪廻転生観」と題して講演をしていただき、33名の受講がありました。
まず、NVN柴田寛彦代表が、「毎日のように親が子供をあやめてしまったり、子供が親を殺したり、学校でのいじめ、いじめを苦にしての自殺が、起こっています。日蓮宗門下として、どのようにこの問題に取り組んだら良いのだろうか。もう一度、いのちというものを見直さなければならないなということでこの講座を始めました。」と、挨拶されました。
庵谷先生の講義は、「輪廻」という言葉について説明され、
無量義経における用例
日蓮聖人の救いとは現世と死後
現世・・・即身成仏・・・お題目信仰
死後・・・仏様のところに往詣する
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法華経における用例
日蓮聖人遺文における用例
を解説されて、その後、
日蓮聖人の前世観、日蓮聖人の来世観
について、話をされました。
最後に、結びとして、「三世にわたる救いの世界について、本時の娑婆世界は常住不滅の浄土であり、大曼荼羅は一切衆生をすくい取ってくださっている姿である。」と話されました。
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私にもできるカウンセリング
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〜約束することの大切さ〜
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渡部公容
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お寺というのは、公に開かれた所ですから、さまざまな人が訪ねてきます。そこでは、いろいろな悩みごとが出されますので、思いがけず急遽「相談室」が始まることがあります。これは、日時の約束もなく突然にやってくる、いわゆる「飛び込み相談」というものです。悩みごとを相談したいと思っている人は、お墓参りのついでに、あるいは門前の掲示板を見て急に話(相談)をしたくなった、という場合も多いようです。もちろん、その時に対応できるのであれば、その時間を作ってあげることはよいことです。しかし、二回目からは必ず日時の約束をしたほうがよいでしょう。
なかには日時の約束をせず「また、いつでもいいですからおいでください」と、いかにも本人の自由意志を尊重するかのような対応をする場合があります。しかしこの伝え方は、相手にどのように受け止められるのでしょうか。
たとえば、転居通知によく見られるような「○○に転居しました。お近くにおいでの折には是非お立ち寄りください。いつでも大歓迎です‥」という文面を見て、果たして訪ねてみようという気になれるでしょうか。本当に「またお会いしたい」という気持ちを伝えたいのであれば「○○日、○○時にお待ちしています」と伝えるべきでしょう。
「時間」というものは、お互いが約束をすることによって生まれるものなのです。
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ビハーラグッズ
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お見舞い用タオル
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カードサイズお守り
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| (赤)
紫 も あ り
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NVNニュース第6号をお届けいたします。
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年2回発行予定でしたが、1回発行となってしまいました。
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NVNウェブサイト(http://www.nvn.cc/)に、講演録や資料等を掲載しております。どうぞ、ご活用下さい。
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ご意見、ご感想をお待ちしております。
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