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日蓮宗新聞 平成18年5月20日号
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もっと身近に ビハーラ
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林 妙和師
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納得のいく医療を受けるには?
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インフォームド・コンセント、セカンドオピニオン
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検査や治療…患者の「自己決定権」尊重が前提
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今回は納得のいく医療を受けるためには、どのような心得があるといいか、について話したいと思います。
その前に、重要となってくる二つのキーワードを説明します。どちらも「自己決定権」を尊重するものです。
インフォームド・コンセント
検査や治療を行う時に医療者は、どんな方法があるか、それを行う事で生じる「メリット」「デメリット」などについて説明し理解し納得したうえで同意を得る。
患者・家族が十分に話し合い、考えや気持ちを分かち合いながら選択は患者と相談して決めていく。
セカンドオピニオン
主治医の診断や治療、説明のほかに、主治医以外の他の医師の意見も聞いて納得して医療を受けること。
他の治療法と比較し納得したうえで治療を受けるという患者の「自己決定権」を尊重します。
艶子さんと文子さんの相談ケースから考えて見ましょう。
艶子さんの場合
夜十時過ぎのこと。か細い声で「聴いてください」と艶子さんからの電話連絡。
「救急外来に電話したが担当医がいない。明日までは待てないか? と言われた。苦しいのに分かってもらえない」との訴え。
艶子さんは甲状腺のガンを手術して五年になる。「リンパ腺が腫れてきたように思うが…」。また最近は問診も簡単になり「細かく聴くと何となく先生が嫌がっているように感じる…」。
艶子さんは堰を切ったように、次々と日頃の医療者へ想いを話した。一時間ほど話し「話を聴いてもらったら少し気分的に楽になりました。今夜は薬飲んで様子見ます」との事だった。
病気の種類によっては一定の治療が終わっても、患者さんは長期に渡って病気と向き合うことになります。
例えばガンの場合、再発の不安や後遺症のつらさなどをかかえて生活をしています。
患者さんにとっては、日々起こることは初めてのことばかり。
患者が不安に感じることがあっても、医療者側が緊急を要しない症例として“慣れ”や効率で処理してしまうことがあります。心のケアが、ないがしろになるのです。
文子さんは、趣味の手芸で人に喜んで もらえる事が生き甲斐。入院生活でも 材料をベッドに置き制作し作品はお見 舞い客、施設などにプレゼント。
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文子さんの相談
「検査の結果乳がんといわれた。手術をすすめられたが迷っている。友人はガンセンターでもう一度診てもらっては? と勧めてくれるが、紹介状を頼みにくいし、A先生に検査データやフィルムなどを貸してほしいとも言いにくい。A先生にもう診ないと断られたらどうしよう」。
医療コーディネーターを活用した文子さん
コーディネーターとして職員が立ち会って調整をした結果、円満に解決。
主治医の紹介状を持って、セカンドオピニオン(ガンセンターの専門医)に受診した。
診断結果と治療法についての見解は同じであった。
医師とよく話し合い、手術実績などから病院を選択。先輩の患者からの体験談も役立った。
文子さんは歯科医。医療従事者であってもこのような不安を抱く現実から、患者の立場が医師と対等ではないことが垣間見られます。
医師と患者・家族がその場ではわかりあったつもりでも、後でズレが生じる事もしばしばみられます。
患者主体と尊厳尊重
病気を克服しようとする主体はあなたなのです。生命や人格・権利が尊重されなければなりません。
医療の現場では患者は未だ弱い立場にあり疑問や不満があっても、相手に伝えられないままになったり、また伝えても改善されないことがあります。
最善の医療を受けるには、遠慮しないで説明を良く聞いて自分自身が病気についてや、自分に合った治療法などを理解できるまで医師等と向き合い、自分の意思をはっきり伝えましょう。
お任せ医療の時代ではないのです。が、現実はまだまだです。 でも、あなたの大切ないのちの質を左右する重大な問題。遠慮や我慢で、人生を諦めないでください。
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(名古屋市道心寺修徒・医療法人大雄会顧問)
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