日蓮宗新聞 平成18年6月20日号
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もっと身近に ビハーラ
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林 妙和師
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高齢者には要注意の季節
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バランスの良い水分摂取は健康の源
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心もからだもみずみずしい毎日を
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梅雨前線が近づき、不安定な気候になってきました。気温が下がったり上がったり、蒸し暑かったり…。こんな時期は体調を崩しやすいもの。特に高齢者にとって要注意の季節です。
先日、知人の祖母が体調を崩し、「かぜかな?」と様子を見ていたら、急に立てなくなって意識が薄れ緊急入院。診断はかぜと脱水症から脳梗塞が起きたとのこと。「食はすすまなかったけど、お茶は飲ませていたのに脱水なの?」と疑問を投げかけられました。
そうなんです! 夏の日差しと汗だけが脱水の原因ではないのです。人のからだは図のように毎日水分の入る量と、からだから出る水分量のバランスが取れていることが大切なのです。
脱水症とは、からだの水分が失われている状態です。例えば、食欲不振・飲み込みが悪いなどで食物や飲み水からによる水分摂取量が不足したり、下痢・おう吐・発熱・発汗などにより、水分を多量に失うなど両方からの原因があります。
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◇高齢者の脱水に関する豆知識
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・高齢者はからだの水分の割合が減少している
・水分や塩分を調整する腎臓機能が低下する
・渇中枢の感受性が低下して、のどの渇きを感じにくい
・体温調節機能が低下して、暑さ寒さの影響を受けやすい
・「トイレが近くなるから…」と飲むことをひかえる
・周囲の知識不足で水分を十分あげてない
など、高齢者の脱水になる原因は様々です。
また、これから迎える夏に起こしやすい熱中症も、水分摂取が大きく影響します。日差しの強い環境や暑い部屋などで、体温が異常に上昇しぐったりするのが熱中症です。
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◇予防のためのワンポイント
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会話を交わしながら楽しく水分補給を
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・意識して水分の補給に心がける
・一日の飲水を1500ml(200mlのコップ8杯分)確保する
・ゼリーやヨーグルトなどを上手に利用する
・食事前後のお茶を用意する
・お茶タイムをこまめに設け、会話を楽しみながら
・夜間の尿を気にする場合は、昼間になるべく摂取する
・室温の調節や、服装で調整
・熱や発汗、下痢などある場合、それだけより多くの水分を失うので補給に注意する
・スポーツ飲料は効果的
・食事や飲水の状態・舌や唇・皮膚の渇き・表情などに目配りを
一日に必要な水分量の目安を知りましょう。少しの気遣いで熱中症や脱水症を予防することができるのです。高齢者は脱水を起こしやすい反面、症状がわかりにくいため発見が遅れたり、脱水が進むと意識障害、ショック、脳梗塞、心筋梗塞などの合併症を誘発することがあります。
本人も訴えず、周囲も気づかず、異常を気づいた時はかなり重くなっていた…。高齢者のケアでは、こんな落とし穴が多々あります。
高齢者に普段から心を向けて、コミュニケーションをとっていると「オヤ?」と、心とからだの変化の早期発見にもつながるのです。バランスの良い水分摂取は健康の源です。
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(名古屋市道心寺修徒・医療法人大雄会顧問)
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