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日蓮宗新聞 平成17年11月20日号
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もっと身近に ビハーラ
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林 妙和師
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ま さ に 一 期 一 会
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患 者 さ ん と の 出 会 い |
医 療 に 携 わ っ て 40 年
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医療に携わって四十年。多くの患者さんとの出会いがありました。まさに一期一会。
看護の看とは〈手でふれ、目でみる〉こと。護はまもるです。
今回は、特別な器具を持たずとも慈しみの心でだれでもできるケア、手当てについてお話ししたいと思います。
手当てとは、発熱し苦しむわが子の額に母が手を当てたり、冷やしたりする「楽にしてあげたい」と願う、いたわりの行為そのものなのです。
痛みのなかでも心の痛みは辛いものです。看護の現場でも、患者さんはすんなり心の痛みを表現するわけではありません。
どのような痛みなのか聞き出す努力をしながら心の痛みに至るまえにまず身体的な痛みがあればそれを緩和し、自分の心に向き合えるゆとりを作らなければなりません。
また、その逆で心の痛みがあるために、身体的な痛みが取れない患者さんにも出会います。
静子さん(65歳)
〈七年前、乳がんで手術。その後、肋骨にがんが転移し、肺に水が溜まった。モルヒネを使用することになったが、未だ麻薬という意識が強いため彼女は拒否していた。座薬や一般的な痛み止めを使用。しかしなかなか痛みが取れないためいらだっている様子〉
いつもの様に、お題目と共に背中をさすっていると「あったかいねえ、人の手は…」と静子さん。
「看護師さんは忙しいから頼みにくい」とも。「主治医に首のしこり(リンパ腺)が大きくなり、数も増えてきた」と訴えても触診をしないとのこと。それは「もう治らないから?」と不安げ。
静子さんの痛みは、がんによる身体的痛みの他に、医師が静子さんときちんと向き合っていないため不安が痛みを増幅させているようでした。
不安・いらだちの起因となる事象は緑々ですが静子さんの例から次のように考えられます。
痛みなど病状の治療、コントロールが十分できていない
病名への疑惑
病状の悪化への不安
身体の変化への不安
医師や看護師の対応のまずさ
治療行為に対する不安
家族との葛藤
死への不安 など
心穏やかに過ごせるようにするためにはまず、
☆話を十分に聴く
☆感情を表出できるように配慮
☆相手が話し始めたら受けとめの言葉を心がける
☆その方の求め(想い)が満たされているか知る
☆要望(想い)に応えるようチームで努力する
患者さんの想いを支持する姿勢が大切です。
「つらいですね」「イライラしますね」など、座って手をさしのべそっとさすりながら…。また布団の上に手を置く…。
そのようなコミュニケーションと「手当て」を積み重ねた結果、静子さんは、在宅で時折入退院を繰り返しながらも「孫に私との思い出をたくさん残したい。保育園の運動会にも行ってきました」とうれしそうに写真を見せてくださいました。
患者にとって心地よいと感じることの工夫が安心・癒しにつながるのではないでしょうか。
どなたにもできる〈手当て〉の一つは、
そばに寄り添うこと(静かに温かい雰囲気で)
摩(さす)
循環系、代謝系の活性化や精神安定を図ることで痛みを和らげる効果があります。
私は師僧から「お題目を唱えながらさすると、お題目の功徳力と心のぬくもりが伝わり、本来人が持っている〈気〉や〈エネルギー〉がリラックス効果を高め、身心の凝りや痛みを和らげるのに役立つ」と教えられ多くの効果を体験しています。
実践方法
○はじめは話を聴いたり、話しかけながら、状況を見てやさしく手または足をさすらせてもらう。
○寝返りができない状況の揚合、背中や腰に手を差し入れるだけでも楽になる。
墓本的には心地よさをもたらすことが重要で足浴など希望に合わせて行います。
☆注意点☆ 傷がある場合、その箇所は避ける。
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(名古屋市道心寺修徒・医療法人大雄会顧問)
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