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日蓮宗新聞 平成17年10月20日号
もっと身近に ビハーラ
林 妙和師
まる14
介護・看護のワンポイント

大切な介護の心と技
創部10年『アウンの細道』会員は20人

◎八十路過ぎ元気に過ごし秋彼岸
◎敬老の日子の手やわらか握手して
◎春の風邪[かぜ]用はなけれど娘[こ]へ電話
◎物言えぬ妻いとおしと髪を梳[す]く
◎老いた背に手を添えし母のぬくもり

 高齢者や家族の心情を託した俳句の一部を紹介しました。
 私が携わる介護老人保健施設『アウン』(愛知県一宮市)では、毎年秋の文化祭でクラブ活動・作業療法での一年間の成果を展示します。
 利用者の多くの短歌や俳句・絵画・習字の他、手作り作品など。屋台も出て大盛況です。
 その一つ俳句クラブ『アウンの細道』は創部十年になります。会員は二十人。
 クラブ名は、施設の庭園の緑や草花咲く道を散策しながら癒されたり、句を詠んだことに由来します。
 各家庭から通っている方・入所の方など本人・家族が自由に参加できます。
 専任の先生の添削や語らいを通しての交流がみなさん楽しみだとおっしゃいます。
 和やかな雰囲気で友人もでき、初めての方も心情を自然と詠まれるようになりました。
 句には詠み手の心の内・外が現れます。

自作の句集を手にする
会員の野田文子さん
(79歳)
 『アウンの細道』の会員のお二人を紹介しましょう。

 一人暮らしの芳子さん。誰もが、シャキシャキおばーさんと思っていました。
◎一人居に過ぎたる広さ籐筵[とうむしろ]
◎誰もこぬ淋しさ癒す梅の花
◎松の内芸みな披露しひ孫去る
◎桃むけば忘れえぬ事あまたあり
 これらの句から家族は、芳子さんの寂しさに初めて気づいたのです。

 次は野田文子さん(七十九歳)の句です。
◎癌ですと聞こえし声の春の昼
◎踏むまいと落ち蝉避けて千鳥足
◎生きし者標[しるべ]を持ちて終戦日
 「年を重ね歩くことが難しく、おまけに癌まで拾い不自由さがましてイライラしていました。
 デイケアに通い、俳句クラブヘの参加をきっかけに戦争の事・病気のこと秘めた想いの内が素直に詠めるようになり、迷っていた自分の心の内を句に表現することで生きる明かりを見出しました。
 『私の迷い道』と題した句集は、孫の応援でパソコンに挑戦した手作りです=写真

孫の応援でパソコンに挑戦
手作り句集『私の迷い道』







 楽しく・急がず・焦らず投げださずをモットーに続けます」と、にっこり。

 ご本人や介護者の心に添う手がかりはいろいろありますが、俳句もその一つです。
 胸中にあるわだかまりや葛藤を表出して心が落ち着くこともあります。
 その方の心情に寄り添うケア沈黙や想いを受け止める感性が大切です。
 その人の想いや人生の回想に耳を傾けることが心のケア。
 心のありようでさらに輝いて生きていけるのです。
 慈悲心に基づいた傾聴(話をよく聴くこと)、共感などは大切な介護の心と技なのです。
(名古屋市道心寺修徒・医療法人大雄会顧問)
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