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日蓮宗新聞 平成17年2月20日号
もっと身近に ビハーラ
林 妙和師
まる6
介護・看護のワンポイント

人それぞれに役割   培われてきたものを尊重する

由[ゆい]さん(80歳)のケース
 熱心な日蓮宗の信者さん。家業の店番でお客さんと話をするのが毎日の楽しみでした。転んで腰を痛め入院。その後、ご家族は「テレビでも見てゆっくりしていてください」と由さんを気遣いすぎ、次第に物忘れがひどくなり、何をするわけでなくぼんやり毎日を過ごすようになりました。
 診察の結果、軽度の認知症(痴呆症)。周囲の勧めでデイサービスに通うことになりました。はじめは馴れない環境に気が進まなかったようでした。
 ある日、送迎バスの中で、足を患っている車椅子の華さん(90歳)と席が隣になり、華さんが「痛そうな」表情をされるとごく自然に由さんはお題目を唱えながら、その方の足をさすられたのです。「ありがとう…」と華さん。
 以後バスで顔を合わせると、華さんはにっこり。由さんはお題目で足をさする。そんな関係が生まれました。
 由さんは笑顔でデイサービスに出かけるようになり、家族も由さんに家事をしてもらうように配慮するようになりました。
 そして元気な声で仏壇に向かって一心にお題目をあげるようになりました。若い頃からしてきたように。
★ 認知症は早期発見、正しい診断が大切です。先入観で判断しないことが重要となってきます。
 あれ?と思ったら市町村の保健センター・在宅介護支援センターなどに問い合わせる。物忘れ外来・老年科など専門医に診察してもらいましよう。

きみさん(82歳)のケース

ピアノの音色で会話もはずむ
 自宅で粗相した時に言われた嫁の一言でプライドが傷つき家の外では、「お金を盗られた…」「食事もくれない」などと言いふらし嫁との関係は最悪でした。
 きみさんは音楽の先生だったことから職員に勧められてピアノを弾いたところ、拍手喝采!以来、「荒城の月・花」を楽譜なしで演奏し、「みんなにピアノを弾いてあげないと」と出かけるのが楽しみになりました。今は習字・絵画もエンジョイ。「誰かから必要とされているという実感」が彼女を蘇らせるきっかけになったのです。
 日常の物忘れ・勘違いは多少の不自由は感じても日常生活に支障はありませんが、痴呆になると全体的な物忘れをする(昼食べた内容でなく、食べたことを忘れる)から忘れていることを自覚できなくなり、日常生活に支障を来たします。

介護のポイント
○痴呆の程度を知る。人間として尊重。
○残された機能(できること・できそうなこと)を活かす。
○自尊心を傷つけない。
○根気よく向き合う。
○生活歴・行動習慣を把握。
○役割を見つける。
○孤独にさせない。交流・仲間作り。
○家族介護の限界を知る。
 痴呆の初期は自分の記憶障害などに違和感を感じたり、周囲の雰囲気に「ついていけないな」と感じる時期があります。
 そこで失敗を指摘されると悲観してうつ状態になったり、混乱してしまうことがあります。また生活習憤や病気で寝込んだり等がきっかけになります。
 認知症は言動に振り回されないよう、病気や障害として愛情もって日頃のケアをしましょう!
 そして痴呆になっても楽しくその人らしく過ごせるように、お手伝いをしていきたいものです。