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日蓮宗新聞 平成17年1月20日号
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もっと身近に ビハーラ
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林 妙和師
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「最後のケア」を見直そう
人間の尊厳を最後まで尊重 看護者にとっても癒し
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医療の現場では、年末年始も年中無休。生命の誕生・病状の急変・事故による救急などで混雑します。死を迎えた方もおられます。
「穏やかなお顔」
「安らかに眠っていらっしゃるよう」
最後のお別れが必ずしもこのような状況でないことがあります。
長い闘病、あるいは亡くなった方の最後の表情。お別れのとき、最後に対面する顔は、遺された人の記憶となって永く心に残ります。これらは残された家族にとって、いつまでも残像になって心に焼き付けられ、生き続けるものです。
大切な人を失った家族にとっても、お別れのこの時間はより重要となってきます。
それなのに今まで、病院では、亡くなった直後の清拭[せいしき]・整容を「死後の処置」として行われ家族は廊下(部屋の外)で待つのが一般的でした。
しかし、臨終から死後のお別れ・お見送りまで家族と共に寄り添った看護を−の視点に立ち、「死後の処置」から「死後のケア」として看取り(最期のケア)を見直そう!
−そんな活動が始まっています。
家族は病んでいるときから、その方とさまざまな場面で向き合っています。それだけに最後の顔が穏やかであると家族も納得し安心できます。
その人を偲ぶことができるように、その人らしい生前の面影を取り戻すことは、人間としての尊厳を尊重したケアなのです。
死化粧も大切なケア、熱心に講習会を受 講する看護師たち。右から三人目が筆者 |
ケア方法
洗髪・全身の清拭
お顔はクレンジングマッサージ
皮膚の汚れを取り除き保湿をする。
蒸しタオルパック
(3回くらい)
化粧を施す
・肌の乾燥を防ぐため下地は多めに。
・ひげ剃りは、シェイビングフオームを使用。逆剃りや左石に動かして皮膚を傷めない。
ケアのポイント
◎家族とともに行う
・家族が死を受け入れる準備になる。
・家族が知っているその方の元気な頃の面影に近づけられる。
ある家族の方から手紙をいただきました。
母へのアドバイスありがとうござい吏した(略)。
意識もほとんどなく痰を吸引される時も顔をいやいやと左石に動かし手で払いのける力もなかった母。
でも温かいタオルで顔と手をふいて「きもちいい?」ときいた大きくうなずいたんです。そして「ありがとう」と口を動かしました。(略)
三日後、私が付き添っているときすーと息を引き取りました。
兄弟で化粧をしました。朝起きるといつもきちんと化粧していた母でした。ファンデーションを塗り眉を書き頬紅と口紅をつけました。安らかな優しい顔でした。(略)
病いの苦しみ、その緩和から臨終にいたるまでのケアを通し、安らぎの中でその人らしい最後が迎えられたのか。看取る側の家族への配慮や心のケアがどれだけできたか、も問われます。
人間としての尊厳を最後まで尊重したケアは、遺された家族の悲嘆を少しでも軽減するためのケアとして見直されています。
また、家族と共に多くの時間を過ごしてきた看護者にとっても癒しになるのです。
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