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日蓮宗新聞 平成24年4月20日号
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もっと身近に ビハーラ
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藤塚 義誠
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90 | |
悲 嘆
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今回もグリーフケア研修会における東京福祉人学・人学院教授、悲嘆学研究所所長鈴木康明先生の講習要旨の一部です。
人震災から七ヵ月(講演は十一月時点)。「七ヵ月もたった」「七ヵ月しかたっていない」どちらでしょうか。池袋にある人学に戻ると学生たちは「震災ってどこの話?」という感じです。ですから講義を通して何度も話します。すると「先生また気仙沼」と言われます。たから「またではたい。あなたたちからは、またかもしれないが、またまたたんた、君たちの感じている時間と被災されている方の時間は全然違う。被災していない私たちが、わかろうとしないでどうする」と話します。問われているのは私たちなのです。
四重苦です。地震と津波と原発そして風評被害という未曾有の事態です。いま日本が問われていることは、福島を代表する被災地の方々を支援すること、その一つは教育だと考えます。
子供たちにとり教師や人人はどのような存在でしょうか。知らないことを教えてくれ、自分のできないことができ、質問に正しく答えてくれる人です。ところが福島の先生はそれができない、いつ原発が収束するのか、いつ故郷に戻れるのかを答えられない。甲状腺ガンが出るのかどうかも答えられない、このような過酷な状況に置かれている人たち。学校を放置できません。その意味でまずは教育だと考えています。このような場で宗教関係者の皆さんにお伝人できることは非常にうれしくまた期待するところです。
かかわる際の留意点を述べてみます。
| (安全感と安心感) 傷つき動揺している遺族に安らかで心落ちつく場所と時間を提供すること。発言の評価をしない、だから駄目なんですなどと言わないでください、自尊心が傷つきます。
| | (個人差の尊重) 一人一人がかかえる課題や歩みのペースはまちまち、その独自性を尊重し、寄り添う姿勢を人切にします。他の人と比較しないでいただきたい、みんな違うのです。
| | (保護的) ゆっくりその人のペースで気持を言葉にしていただきます。自責や罪悪感に着目し、むやみに自分を責めすぎないように話します。根掘り葉掘り聞き出すことはやめましょう。早く話してと焦らせたり、話の先回りをしてはいけません。
| | (信頼感と連帯感) 遺族に同じ人としてかかわっていると感じていただくこと。あなたと私は同じ人として時間と空間を共有し、感情を抑えこまないように促します。
| | (自己肯定力を信じる) 死別の悲しみの消滅を目指すのではなく、必ず悲しみと上手に付き合える日がくると信じましょう。時が日薬といいますが、それでホッとする人がいる一方で、それを信じていつになれば日薬なるのかしらという人心います。悲しみは消えるものではありません。
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まとめは「あたりまえのことをあたりまえに」ということです。
| (相手の様子をよく見てくたさい) いきなり話しかけたり、無理やり話題をつくるなど はやめましょう。聞くという態度を押しつけません。優先すべきは相手です。
| | (安心して話してもらうためには) 責めないこと。何よりも皆さんが落ちついていること、穏やかであること。相手はよく見ています。ゆっくり、しっかり話します。
| | (聞かせていただけますか) お教えくださいという姿勢。こだわりを抑え、忍耐強く、そしてふりはしない。
| | (主体はだれ?)お話したいものだけをどうぞ話してください。自分の体験談は二の次です。
| | (要注意) がんばろう。アドバイス。達観や俯瞰。気持はわかります。推測、憶測そして気休め。さらに思い込みに心したいものです。
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鈴木先生の御教授を感謝し講演要旨を納めます。
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(日蓮宗ビハーラネットワーク世話人、伊那谷生と死を考える会代表、
長野県大法寺住職)
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