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生老病死と向き合う あなたのそばに
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日蓮宗新聞 令和5年10月20日号
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逆境でも折れない心
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日高 隆雄
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生き抜くための レジリエンス
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新型コロナウイルス感染症、ロシアによるウクライナ侵攻、気候変動に伴う災害となかなか終わりの見えないストレスのかかる日が続いています。このような状況の中で「レジリエンス」という言葉が注目されています。元々は生態学分野の用語で「外からの圧力で変形した物が元の形や位置に戻る力」を意味します。現在は人びとが逆境を乗り越え、強く生き抜くための「復元力」や「回復力」という意味でも用いられています。
このレジリエンスという言葉を聞いて、真っ先に思い浮かぶのは宗祖・日蓮聖人です。日蓮聖人は四大法難(松葉谷[まつばがやつ]ご草庵焼き討ち、伊豆流罪、小松原の襲撃、龍ノロ[たつのくち]での斬首危機)をはじめとする度重[たびかさ]なる法難や迫害を受けながらも、決して屈することなく、強い信念と精神力をもって命がけで克服されました。想像を絶するような高いレジリエンスで、末法[まっぽう]の世に法華経をお弘めになられたのです。
レジリエンスを高めるための条件として、自己を冷静に見つめ直し、コントロールすること、心と身体の健康を保つこと、高い信仰心と道徳心、強い使命感を持つこと、利他の心で周囲の人との強い信頼関係を築くことなどがあげられています。これらはいずれも私たちが、日蓮宗信徒として、法華経に帰依し、ご本尊に向かい、感謝の気持ちを込めて合掌し、お題目を唱え、お経を読むなど、毎日の実践から自然に得られることではないでしょうか。我々のご先祖さまも高いレジリエンスで疫病や戦争、飢饉など、さまざまな危機を乗り越えて、大切な命を現在に至るまでつないできてくれました。私たちも、さまざまな困難にぶつかったり、挫折したりしても、決してくじけることなく、むしろ成長のための絶好のチャンスととらえ、自分の力を信じ、立ち向かい、乗り越えていきましょう。
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(日蓮宗ビハーラネットワーク世話人・富山県妙輪寺住職・産婦人科医師)
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