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日蓮宗新聞 平成31年4月20日号
女性のこころの道標[みちしるべ]に
太田喜久子

竜女成仏・既成の考えを持った周りを変える瞬間

 平成6年、私は精神科医として精神障がい者のため、敷居の低い診療所を作りたいとクリニックを開設しました。それから25年、世の中は大きく変化し、心悩める人たちすぺての健康のためにその門戸を開くようになりました。外来受診者の男女比は4:6で圧倒的に女性が多くなっています。私が女医だから女性が多いわけではなく、女性の生き方が多様となり、自由な生き方ができるようになるとともに生きづらさを感じている人が増えてきたからです。
 女性のライフサイクルは質的にも大きく変化してきました。女性の社会進出で晩婚化が進み、出産年齢が高くなっていることはその1つです。また男女ともに平均寿命が延びたことにより、子育てを終えた後の人生が長くなる、つまり、夫の定年退職後に夫婦2人で過ごす期間や伴侶の死後において1人での人生が長くなりました。このような要因などから、男性は働き盛りの受診者、女性は中年以降の受診者が多くなるのです。これからの女性は既成の生き方とは異なる個性化の道を創造していくことが求められています。
 私は寺院で生活させて頂いていますが、心理学者でユング派を専門とする河合隼雄先生の竜女成仏におけるアニマ(魂、生命)像の解釈から、女人成仏に関心を持っていました。『法華経』の「提婆達多品[だいばだったほん]第12」で、シャカラ竜王の8歳の娘は“竜身・年少・女性”という悪条件にもかかわらず、一瞬にして変成男子[へんじょうなんし]を遂げて成仏したという説話が女人成仏の根拠とされています。女人は梵天王・帝釈天・魔王・転輪聖王[てんりんじょうおう]・仏身(不退転の菩薩)の5つの位には成ることができない5障を持つとまで非難されていましたが、8歳の竜女は変成男子となり、さらに竜女は手にしていた三千大千世界のずぺてに匹敵するほど価値のある宝珠を釈尊に手渡し、竜女自らが具えていた力で完全な覚りを得て不退転の菩薩の地位を得るのです。
 忽然の間に見た光景に「智積[ちしゃく]菩薩及び舎利弗[しゃりほつ]、一切の衆会[しゅうえ]、黙然[もくねん]として信受す」。竜女への差別や卑下した思い込みなど女性への既成の考えを持った周りを変える成仏の瞬間です。女性はさまざまな周囲の事柄により自分らしく生きることができなくなると心の病気になります。患者さんを取り巻く悲惨な状況に無力さを感じることがあります。この竜女成仏の説話を唱える時、非力に見える女性ではありますが、見守るだけで、どうしようもできないと思える状況を自らの力で生きぬくことができると信じられるのです。生きづらい今の時代、この経典は女性のこころの道標になるでしょう。
(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員)
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