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生老病死と向き合う あなたのそばに
日蓮宗新聞 令和元年5月20日号
お互いさま
林 妙和

明日は我が身、より沿い共に生きる社会

 「美代さん飲み物は?」
 『コーヒーをお願い』
 「温かいの? 冷たいの?」
 『そうねえ冷たいのを頂くわ。昭子さんは?』
 2人は同じ町内の顔馴染です。
 美代さんは、近所の人との交流もあり、明るく優しい人でした。
 ところが最近は姿を見かけず、昭子さんが心配して、玄関のチャイムを押しても応えないため、美代さんの家族に連絡をしてみました。家族からは「テレビの音量が大きく、聞き返しや生返事が多くなった。車の音にも気付かず、事故に遭いそうになったのを機に家族ともめて、悲観的になっている」とのことでした。
 昭子さんは、他人事ではないと思い、保健師に、難聴のある人とのコミュニケーションの取り方を相談。「近くで、ゆっくりはっきり話すこと」「顔を見て話すこと」「耳鼻科で検査をして、補聴器を使うこともある」などを教えてもらい、昭子さんは根気強く美代さんを訪ねました。また美代さんの家族も、耳鼻科受診に協力してくれました。しばらくして、美代さんは補聴器にも慣れて笑顔が戻り、以前のように近隣の仲間との交流を楽しめるようになりました。
 加齢による変化は「見えにくい」「聞こえにくい」など、個人差がありますが、生理的な機能低下の1つです。暮らしの質(QOL)に徐々に影響を及ぼします。
 美代さんのように、加齢による聞こえにくさから、孤立感や、他者との交流を避ける誘因にもなります。また、音としては聞こえても言果が聞き取りにくいために、話の内容が正しく伝わらず、ちぐはぐな返答になると認知症と誤解されることもあります。
 「老・病・死」は自然の摂理であり、明日は我が身です。
 日常生活の中で「あれっ」と思ったら、お互いさまの心でより添い、相手を思いやり、自尊心を傷つけない交流が図れるよう心得ておきたいものです。
 高齢社会を共に生きる中で、自らがどう生きるかを見つめることでもあるのです。
 (日蓮宗ビハーラ・ネットワーク世話人)
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