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生老病死と向き合う あなたのそばに
日蓮宗新聞 平成31年2月20日号
自死者の葬儀を執り行って
今田 忠彰

大切なのは見守っているよ、というメッセージ

 自死者の葬儀を執り行ったことがある。奥さまから電話があり、内々に相談したいことがあると言う。早速ご自宅に訪問すると、実はとはじまり、ご主人の自死の経緯を聞いた。そして、葬儀は身内だけで執行したいとのこと。
 私は菩提寺の住職として、自死には一切触れず、ごく普通に振舞い、淡々と葬儀を執行した。それが奥さまはじめ、ご遺族の願いだからである。
 葬儀が終わり、初七日から四十九日まで、七日[なぬか]七日[なぬか](七日ごと)の供養に出向いた。
 七日七日の供養は、亡くなった霊位の供養のためであるだけでなく、遺族の心を癒す、大切な意義がある。これは菩提寺の住職でしかなし得ない役割である。
 いつもより一段と心を込めて供養した。七日七日にお経をあげることにより、遺族の心が癒されていくことが分かる。
 遺族たちは、必死になって頑張っている。はち切れんばかりの勇気を出して。でも、もう限界。
 そんな時、眠れてる?ご飯食べてる? ちょっとお茶して行かない? などと、一声かけてほしい。どんなにか心癒やされることだろう。
 遺族の心を癒やすもう1つとして、環境を変えることも大切である。
 以前と同じ環境にいれば、隠している自死の事実が世間に知れているのではないかと、心穏やかではいられない。
 全然知らない環境であれば、後ろめたい気持ちにならないですむ。家族全員で、遠方へ引っ越しすることも考えられる。
 自死支援の活動をしている医師から、葬儀の後、最も危険なのが家族の中で、責任者・犯人探しが始まることだと聞いたことがある。
 これが原因で最悪、家・庭・家族が崩壊してしまう。多くのケースがこれに当たる。逆にまれなケースだが、家族が一致団結する場合もある。
 日頃の家族関係の良し悪しが、大きく影響しているようだ。
 自死遺族には、「見守っているよ」というメッセージが、何よりもありがたい。
 (日蓮宗ビハーラ・ネットワーク代表)
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