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生老病死と向き合う あなたのそばに
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日蓮宗新聞 平成30年12月20日号
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大切な人をなくした人のための権利条約
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吉田 尚英
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悲しみを懐きながら歩めば、
少しは楽になれるかもしれません
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大切な人をなくした人のための権利条約
グリーフワークにとりくむ一般社団法人『リヴオン』が提唱する『大切な人をなくした人のための権利条約』を紹介します。死別や喪失による悲しみや怒りは自然な感情です。乗り越えようとか、立ち直ろうとするのではなく、その感情を抱きながら歩むものだと受け入れたら、少し楽になれるかもしれません。読者の中にも大切な人をなくしてつらい日々を送っている人もいるでしょう。どうぞこの『権利』を行使してみてください。
第一条 悲しんでもいい落ち込んでもいい
「がんばらないと」「心配かけてはいけない」と気丈にふるまっているかもしれません。でも時に自分の心の奥にある声に耳を傾けてみてください。悲しいときは悲しみ、落ちこむことがあっても自然なことです。
第二条 自分を許してもいい
「わたしが悪かったんだ」と自分を責めてどうしようもないとき「どうにもできないことがあったんだ」ということを認めてもよいのです。
自分を責めるのは、あなたにとって、その人の存在がそれほどまでに大事だった証です。
第三条 考えない、思い’出さないときもいい
死を直視しないのもまた自由です。辛いから考えたくない、思い出したくない。そんな時は、いま自分が打ち込めることに力をそそげばよいのです。考えられるとき、思い出したいときに、そうすればよいのです。亡くなった人はそんなあなたを責めないでしょうから。
第四条 自分を大切に
「みんな大変だから」と思い、我慢をすることも尊いことです。でも自分がつぶれてしまうほどの我慢はどうでしょうか。大切なのはあなたが、あなたらしく生きてゆけること。自分を大切にすることに許しを与えてもよいのです。
第五条 助けてもらうこと 「お互いさま」だれもがいつかは大切な人をなくし、苦しいときがあります。だからいま、辛いのなら、支えてもらってもよいのです。そして今度は、誰かにその恩を返したり、送ればよいのです。「助けて」は悪いことではありません。
第六条 みんなちがって、それぞれにいい
同じことを前にしても、感じ方はちがいます。人それぞれであるということ。どちらが重たくて、どちらが軽いということは本当はありません。ただ「そう感じている」ということが真実なのです。感じるままに。ちがいをちがいのままに。
第七条 自分の人生を歩んでいい
自分の人生を生きること。たのしい時間をもつこと。時に亡くした人を忘れていること。それは亡くした人を置いていくことではありません。
喪失した相手の存在とともにあなたの人生を歩んでいくことはきっとできます。
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グリーフから希望を |
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(日蓮宗ビハーラネットワーク会員、自死・自殺に向き合う僧侶の会共同代表)
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