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生老病死と向き合う あなたのそばに
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日蓮宗新聞 平成30年10月20日号
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視覚障がい者の心を知る
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今田 忠彰
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少しの配慮が大きな助けになる
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視覚に障がいがある人が、駅のホームから転落する事故が後を絶たない。視覚障がい者にとってのホームは、欄干のない橋・柵のない絶壁と例えられるほど、危険だ。
視覚障がい者にアンケートをしたところ、約4割の人が転落事故を経験していた。同じ時間に上りと下りの電車が入ってきて、どちらが自分の乗る電車か分からなくなってしまった。ホームが人ごみで混雑していて、方向が分からなくなった。慣れている路でも、思い込みが重大な事故を起こしてしまうこともある。
ホームドアが設置されている駅が増えてきた。国交省によると、1日の乗降客が10万人以上の駅から優先的に設置していると言う。しかし、1駅で数億円から数十億円もするので、なかなか進んでいないという。
健常者には何でもないことが、視覚障がい者にとっては、生死を分けるほどのことになる。ATMや家電製品がタッチパネルなので、操作に困る。電気自動車が音もなく近づいてくるので、ぶつかってしまう。点字ブロックの上にカバンが置いてある。歩きスマホの人とぶつかってしまう。私たちのちょっとした配慮が、視覚障がい者にとって大きな助けになるのだ、と知ることが大切だ。
視覚障がい者といっても全盲の人ばかりではない。弱視の人や中途で視力を失った人、全体的に見えづらい人など、千差万別なのである。
日本に約30万人といわれる視覚障がい者の内、約7割が弱視の人だ。弱視の人たちは、盲導犬もなく、白杖1本で街中を歩いている。そんな時、私たちはどんな風に声をかけたらいいのだろろか。危険ですよ、と言ったのでは、誰がどんなふうに危険なのか分からかない。階段も、上り階段ですよ、と具体的に教えて欲しい。
道案内する時も、手を引くのではなく、肩に手を置かせて、状況説明をしながら誘導して欲しい。視覚に障がいがある人も、周りの人たちの善意の働きかけにより、ずいぷんと街中で動きやすく、生きやすくなるだろう。
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(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク代表)
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