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日蓮宗新聞 平成30年9月20日号
認知症へのサポート
松森 孝雄

認知症へのサポート

 筆者は地元和歌山において社会教化事業協会会長を拝命している。今年度の研修会において「認知症サポーター養成講座」を開設し、管内僧侶とともに認知症について学んだ。これは、「社会問題化して、檀信徒の家族の中にも認知症を発症した人たちが増えてきている今、私たち僧侶もその対応を学んでおくペき」という会員からの要望によるものであった。
 少し社会に目を向ければ、高速道路の逆走、振り込め詐欺のターゲットになりやすいなど、認知症を原因とする事故や利用される犯罪が多くなっていることに気づく。また、家庭内においては、今まで温厚だった人が急に怒りっぽくなったり、トイレの場所がわからず間に合わなかったり、街中を徘徊するようになったり、と家族がその対応に苦労しているという話もよく耳にするようになった。
 認知症には初期症伏があり、その予兆を的確に察知し、治療を受けることによって進行を遅らせることができる。しかし、本人は「自分が認知症である」ことを認めたがらない故にしかるベき治療を受けるまでに至らず、そのまま進行してしまうというケースも多いようである。
 認知症とは病名ではなく、特有の症状を示す総称であり、代表的なものは「アルツハイマー病」などがある。
 ここで重要なのは、認知症の人は、その言動によって周りの人たちに「迷惑」や「不快な思い」をかけることが多いが、本人は「全く悪くない」ということである。もちろん、その言動によって法を犯せば罪であるが、ここでいう「本人は全く悪くない」というのは、誰も好き好んで認知症にならない、ということである。本人は健常な頃と変わらず一生懸命生きようとしているのである。
 レジで財布の中のお金を見ながら数えられない時、そのモタモタ感から周りはイライラしがちであるが、そっと手を差し伸べて(声をかけて)、一緒に数えたり、その素振りから帰路がわからなくなっている様子であれば、一声かけたり、と否定や拒絶ではなく、「共に解決する」姿勢が、認知症の人たちが安心して暮らせる街や家庭になっていくのである。
 家族のひとりが認知症になった時、目の前で繰り広げられる不可解な言動によって、「なんで?」 「どうして?」と辛い思いになってしまうので、「共に解決」というのは簡単なことではないという思いも当然ではあるが、本人にもプライドがあり、一生懸命生きているということを地域や家族で理解する輪が広がる未来に光を見た講習であった。
 (ビハーラ・ネットワーク事務局員)
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