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生老病死と向き合う あなたのそばに
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日蓮宗新聞 平成28年6月20日号
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お墓参りに行きませんか?
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村瀬 正光
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良縁を望んでいるのはご先祖さま
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以前、医学部の後輩が良縁を授かりたいと、縁結びで有名な神社に行き、お守りを貰ってきました。その時の話の流れで「縁結びの神さまよりも、自分のご先祖さまにお願いした方がよいのでは。何より良縁を望んでいるのは、ご先祖さまだよ。最近、お墓参りには行っているの?」と質問したら、その週末に両親と一緒にお墓参りに行ってきたと報告を受けました。
最近の調査で、不安などのさまざまな感情が人びとを宗教に向かわせ、そして宗教活動はその不安を軽減させ心の平安をもたらすことが分かってきました。後輩も良縁を授かりたいとのさまざまな感情が、お墓参りに繋がったようです。
仏事離れなどを指摘される世の中ですが、お墓参りをされる方は少なくありません。第一生命経済研究所によれば、お盆にお墓参りなどをしている人は約7割と報告しています。
精神科の本には、大切な人を亡くした時の対処の方法が次のように書かれています。「対処の最も人間的な方法は、愛するものを記憶の中で生かし続けることによって和らげることである。遺された者が死者との関係を維持するのは、正常で健全なことである。またそのつながりを促すことも学はなければならない。死者との関係を持続するための適切な方法が確立すれば、より快適に生きていくことができる」(『精神科シークレット』)。死者との関係を適切に維持するための智慧が、お墓ではないでしょうか。
日蓮聖人はご入滅になられる直前の弘安5年(1282)9月19日に、身延の波木井実長公に生涯最後のお手紙を書かれています。弟子の日興上人が代筆され、最後の署名も書けない状況でした。そのお手紙の中で「どこで死を迎えたとしても、お墓は身延の沢に建てて欲しい」と書かれています。その身延の沢にある日蓮聖人のお墓(ご廟所)は、数百年後の私たちに多大な影響を及ぼしています。子孫だけでなく、後世の人々のためにもお墓は重要なものです。
家族一緒にお墓参りに行きませんか。子どもや孫の世代にお墓の場所を教え、お参りの仕方を伝える。そのことが、将来の子孫の不安を軽減させ、心の安寧に繋がります。
墓前で家族一緒に唱えるお題目、多くの功徳がおとずれることでしょう。
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(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク世話人、医学博士)
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