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日蓮宗新聞 平成28年5月20日号
認知症患者・家族の法的責任
今田 忠彰

認知症患者の見守りは
地域社会、みんなで対応しよう

 3月1日に最高裁判所は、認知症患者が起こした事故の損害賠償責任が遺族にはない、という判断を示した。
 認知症患者家族や介護の現場からは、画期的な判決だと、上々の反応である。
 認知症患者が徘徊中に列車の軌道に入り、列車に撥ねられて死亡した事故で、JR東海が列車の運行が止まった損害を介護していた家族に求め、家族に「見守り責任」があるのかが争われていた。
 一審、二審は、遺族への損害賠償を認めたが、最高裁は逆転し、「認知症患者の家族の監督義務を否定し、賠償責任がない」とした。
 但し、今回の判決は、すべての家族の責任を免除したわけではなく、今回のケースでは、妻と長男が民法714条但書きの「監督義務者」には当たらない、という判断をしたに過ぎない。同居の有無や認知症状の如何などによっては、判断が変わる可能性があるだろう。
 一方、被害者への救済はどのようになるのだろうか。
 今回は鉄道会社だったが、一般人だったら判断が変わる可能性もあるだろう。
 推計によると平成35年には、認知症患者が全国で7〜8百万人を超えるとされている。65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症患者という中で、認知症患者の行方不明事故は年間で1万人を超えている。
 これはもはや、介護は家族間だけの問題ではなく、社会全体の問題だという認識が必要だろう。国民皆保険のわが国で、健康保険や年金制度、失業保険とともに社会保障制度の一環として介護保険制度ができた理由もここにある。
 介護は、家族を中心に、介護保険サービス事業所、市区町村の行政、近隣住民やボランティアの協力など、地域全体で対応していかなければ追いつかない問題だ。昔からの「隣り組」の復活が求められている。
 厚生労働省は、認知症サポーター100万人キャラバンとして、「認知症になっても安心して暮らせる街作り」と銘して、キャラバンメイトを養成している。
 認知症患者が自動車事故を起こしたケースもあり、認知症患者が加害者になっても被害者になっても、安心して暮らしていける保険制度や、地域社会全体で責任を分担するような法整備が必要になっている。
 加齢は、誰にでも訪れてくるものだから。
 (日蓮宗ビハーラ・ネットワーク代表)
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