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生老病死と向き合う あなたのそばに
日蓮宗新聞 平成27年8月20日号
「 祈 り 」
村瀬 正光

お題目には、仏さまの功徳が溢れている

 私は僧侶として法務をするかたわら、医師として病院で勤務しております。そこで働いていると、寺院にいる時より「祈り」を感じることがあります。
 意外に思われるかもしれませんが、病院という場所は「祈り」に満ち溢れています。
 子どもが欲しいと不妊治療を行っている夫婦の祈り、子どもが無事に生まれてきて欲しいと願う家族の祈り、検査の結果が悪くないようにとの祈り、手術が成功するようにと手術室前で待機する家族の祈り、早く退院できるようにとの祈り。お守りや御札などを病室で見ない日はなく、生老病死に関わるさまざまな祈りが、自然と行われています。
 そして、8月はお盆休みの季節です。多くの方が帰省されたのではないでしょうか。そして、お墓参りをされた方も少なくないと思います。第一生命経済研究所によれば、「お盆」の宗教行事を実施している人は国民の約7割と報告しています。仏事離れを指摘される時代ですが、現実には多くの人が仏さま・ご先祖さまに祈りを捧げています。
 では、昔はどうだったのでしょうか。江戸時代の臨終行儀1 『千代見草ちよみぐさ)』には、「このごろの追善供養を見てみると、初七日(しょなぬか)は悲しきゆえ丁寧にお勤めをし、三七日(二十一日目)からは気持ちも少し冷め、四七日(二十八日目)には万事を省略し、六七日(四十二日目)には日数も忘れてしまい、得るものがあれば訴訟や争い事を勤めるようになります」と書かれています。江戸時代も、今と同じように仏事離れを指摘されていたようです。しかし、時代を超えて「お盆」や「葬儀」での「祈り」は続いています。
 「祈り」を行う時、そこには折りの対象である仏さま(久遠本仏)がおられます。そして祈る時に唱える「南無妙法蓮華経」のお題目には、仏さまの功徳が溢れています。
 先日、幼稚園くらいの男の子が、玩具売り場の前にあるガチャガチャ(カプセルに入った玩具)をしていました。手を合わせ、お題目を唱えた後、レバーを回している姿をみて、とても微笑ましく感じました。この小さな「祈り」のそばにも、仏さまがおられると思います。
 困難に直面した時、私たちは祈らずにはいられません。お題曰を唱えたあなたのそばに、慈愛に満ちた仏さまが寄り添っておられることでしょう。
 (日蓮宗ビハーラ・ネットワーク世話人、医学博士)
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