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生老病死と向き合う あなたのそばに
日蓮宗新聞 平成25年4月20日号
自死者追善法要にて
吉田 尚英

遺族が個人と向き合える場所を

自責の念、答え探し、仏の救いを必要とする人びと

 今年の釈尊涅槃会の2月15日、日蓮宗僧侶の有志による自死者追善法要が営まれました。ここ数年、超宗派の「自死・自殺に向き合う僧侶の会」をはじめ、曹洞宗・浄土宗など各地・各宗で自死者追悼法要が営まれていますが、日蓮宗の法要は今回が初めてです。
 自死についての偏見・差別・無理解に遺族は傷ついています。葬儀や法事の席で親族から責められたり、自死であることを隠して日常を過ごさなければならなかったりして、遺族が心から故人に向き合える場所があまりに少ないのが現状です。
 また、なぜ死んだのかと答えを探したり、自分が悪かったと自責の念にさいなまれたり、仏さまの救いが必要な方に届いていないのも事実です。
 さらに、遺族や親族ではない友人・恋人・内縁関係の方などは葬儀や法事に呼ばれず、祈る場所さえないことがあります。
 そのような状況の中だからこそ、大切な方を自死で亡くされた方々が、安心して祈り、故人に向き合える法要が必要です。
 法要当日は、自死で大切な方を亡くされた方のみが参列します。周囲のしがらみや偏見のない中で手を合わせることを第一に準備を進めます。
 なかにはためらい悩みながら必死に会場にたどり着く方もいます。会場に入るまで自分が参加してよいのか思い悩んでいる方もいます。そんな方のために、穏やかに、さりげなく背中を押す役目の案内係僧侶が駅から寺までの街角に立ちます。今年の2月15日はみぞれまじりの雨が降るとてお寒い日でしたが、僧侶が傘を並べて寄り添い境内までご案内しました。
 「自死した人は安らかにしているのだろうか」とご遺族は心配しています。それに僧侶が自信を持って答え、それを証明するためにも、僧侶は真剣に法要に臨み、お経を読み、お題目をお唱えします。参列者もおつとめをしながら亡き方と存分に対話をし、仏さまの前で誰に気兼ねすることなく涙を流します。
 法要後は、それぞれの思いや辛さを語り合う「分かち合いの会」を開きます。数名ずつのグループに分かれて、僧侶が進行役となり安心して語り合える場です。同席した僧侶はそこで悩みや苦みの深さを教えられ、共に涙を流します。
 本来お寺は大切な方を亡くされた方々が安心して悲しめる場所、亡き方に向き合える場所です。お寺の門をくぐる方の思いを受け止め、寄り添うことの重さを、この法要で教えていただきました。
 (日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員)
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