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読者のお便り
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コロナでの違和感・論説「ウイルスは悪者なのか」のタイトルで解消
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新型コロナウイルス感染症(COVID−19)が蔓延し、しばしば「感染者が悪いんじゃない。悪いのはウイルスです」という言説に接することがあり、違和感を覚えていました。法華経が説く、あらゆる存在を敬う、という精神は、ウイルスを悪者にして問題を片付けようとするやり方とは相入れないものです。
そのように考えていたものですから、5月20日号の「論説」の題となる「ウイルスは悪者なのか」を見た時、この違和
感を解消してくれる記事がついに出た、と直感しました。
中身を読むと果たして、
ウイルスや細菌などの病原体は、悪魔や悪鬼のようにあわよくば人間の体と心を犯そうと虎視耽々と狙っているような存在ではない。存在そのものに善や悪の性質があるのではない。
という文章に行き当たり、まさに、我が意を得たりと膝をうちました。自然現象が災難となってしまう原因は我々の振る舞いにあります。エボラウイルスも人が無闇に森林を拓かなかったら人間社会に出現することはなかったといわれます。また、COVID−19も人の振る舞いがクラスターを出現させます。まさに柴田寛彦論説委員の次の文章の通りです。
『九横経(くおうきょう)』…9番目として「避けるべきことを避けないこと」が挙げられている。その内容は、「…避けて近づかないようにするべきところに近づいて死ぬことを横死と言う」と説明されている。現代のように病原体の性質や感染経路についての知識が普及している時代に、敢えてそれらに近づくような行動をして感染し、自ら生命の危険に至ること、他人に感染を媒介することは、『九横経』の教えに反することになる。
BBCのニュースによれば、21歳の姪御さんを失ったイギリス女性も次のように言ったそうです。
“ウイルスが広がっているのではありません。人がウイルスを広めているのです”
柴田委員はさらに、『立正安国論』を引かれて論じています。
日蓮聖人は『立正安国論』の中で、世の中に正しい教えが行われていないと様々な不幸な現象が起こるとする経典を引用して、次のように述ぺられている。「…(大集経)。災難の原因は正法を護らないことにあるとする経文の証拠である」と。現今の疫病の蔓延に伴う社会の混乱を見るにつけ、この現象は単にウィルス感染症による混乱とみるのではなく、その根底に混乱を増長する人間社会の思想的混乱があるのではないかと熟慮を巡らす必要がある。
「災難の原因は正法を護らないこと」という言葉は大変重要な視点であると思います。
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(兵庫県立大学名誉教授・岡山県妙興寺=岡田真水)
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