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日蓮宗新聞 令和6年5月20日号
ポストコロナ 
引きこもりの治療と支援
精神科医・太田喜久子

尊厳を守り、本人の視点に立った対応を

 2020年1月に国内で流行し始めた新型コロナ感染症で、一時は身近で亡くなった人の情報などから恐怖と不安が拡大し、人の集まる場を避けマスクと手洗い、うがいが続く生活が続きました。
 ようやく収束の見通しが立ち、昨年5月に感染症法上の扱いが5類になり、今年4月には無料で受けられたワクチンの公費支援が全面撤廃されました。しかしインフルエンザと異なり感染後の身体症状や精神症状の後遺症は解明されていないのが現状です。
 内開府がコロナ流行時に行った調査では、引きこもりの人が146万人と推定され、コロナ前の調査の115万人から約30万人増えました。外出制限による自宅授業や自宅勤務など環境に起因する引きこもりは、物理的なものと病的なものがあります。病的な引きこもりになると長期にわたり心を病むケースがあります。コロナ禍前は社交的で社会的達成感を求める傾向を持ち協調性が高い人にそのリスクが高かったことが判明しています。
 引きこもりは誰にでも起こりうるため、社会全体で取り組むベき課題であることがコロナ禍から示されました。治療やサポートには、人としての尊厳を守り本人の視点に立った対応が求められ、問題解決型ではなく、伴走型支援の必要性を厚生労働省が支援のポイントとして示しています。
 引きこもりを積極的に診療している精神科のクリニックでは医師の往診から始まり、関わり・つながりを続け、多職種の見守り中での関わりに快復過程の糸口があると報告しています。私のクリニックもこの困難な課題の取り組みを始めました。
 ポストコロナの時代になり、引きこもりからの快復には新しい視点からの支援を必要としています。大慈悲をもってすベての人を救済する法華経の智慧こそが、現在、求められているのではと思います。
(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員)
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