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日蓮宗新聞 令和6年2月20日号
四十九日の忘れ物
臨床仏教師  星 光照

悲しみのなかでは「できなくてもいい」

 「お母さん、何やってるのよ、もう」と声が聞こえ、玄関に行ってみると娘さんが「すみません、お母さんがお位牌を忘れてしまって…」と。「ちゃんと確認したの?」「玄関を出るまではあったょ…」「あっ、お線香もない?!」
 喪主であるお母さんが「すみません…」と申し訳なさそうにうつむいていました。
 通夜・葬儀を終えたと思ったら、あっという間にやってくる四十九日忌。一般的には四十九日の法要後、納骨をします。また白木[しらき]の位牌から本位牌[ほんいはい]へ魂を入れるのも四十九日忌の役割。お骨、本位牌、白木の位牌、塔婆、加えて供物や花、線香などと遺族が準備しなければならないものがたくさんあります。
 大切な人を亡くした遺族にはさまざまな変化が起きます。心や身体だけではなく、物を判断したり、記憶したりする認知機能にも影響が出るといわれます。
○1度間いただけでは覚えられない
○同じことを何度も聞いてしまう
○家事の段取りがうまくいかない
○予定が立てられない
○道などを間違える
○1人で決められない
などが起こる可能性があります。
 いつもなら問題なくできたことができなくなり、戸惑ったり情けなくなって落ち込んでしまう人も少なくありません。
 大切なのは「できなくてもいい」なのです。もし誰かが間違っても今はそういう状態だからと認識して責めたりしないでください。互いが確認し合って声をかけ合いましょう。しばらく経つと認知機能は元に戻ります。ちょっとしたことも紙に書いて貼っておくのは良い方法です。
 法事での忘れ物は故人に申し訳ないという気持ちがあるかもしれませんが、忘れ物をしたとしても、法事ができないことはありませんのでご心配なく。葬儀や仏事は慣れていなくて当たり前なのですから。
(日蓮宗ビハーラネットワーク会員)
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