日蓮宗 ビハーラ・ネットワーク
 
HOME > TOP > お知らせ > 関連記事 > 日蓮宗新聞より
(日蓮宗新聞 令和4年12月20日号) 記事 ←前次→

NVNトップメニュー
NVNについて
ビハーラ活動とは
NVNニュース
ビハーラ活動講習会
ビハーラグッズ
心といのちの講座
お知らせ
 関連記事
  日蓮宗新聞より
 レポート

会員限定
生老病死と向き合う あなたのそばに
日蓮宗新聞 令和4年12月20日号
仏神の采配
齊藤 耀慧

愚癡より感謝で物事の見え方が変わる

 両膝の人工関節置換手術で約1ヵ月間、入院しました。入院は病気と向き合うだけではなく、さまざまな価値観を持つ人との「集団生活」という一面もあります。そういったことから自宅での気ままな日常生活からの入院生活という環境の変化は人の心の持ちようを変え、人間の根源的な悪徳である貪(とん)・瞋(じん、怒りや憎しみ)・痴(ち、愚痴)が増幅しがちです。例えば、病気やけがといった不自由を抱えた人は、ついついわがままになったり、自分に甘く他人に厳しくなることもあります。私もそんな1人でした。
 病棟で人間ウォッチングをしていると、「あの人がいま言っていることは、さっきの看護師さんに言っていたことと違う」などの会話が耳に入ってきて、妙に気になり、気持ちが穏やかではいられなくなりました。また誰か
の言葉にイライラしたり、さらにそんな目で自分自身を見つめると自己嫌悪してしまうという…。そんな毎日に疲れてしまいました。
 ある日のことです。担当医が来て、「コロナ感染の疑いがあるので7日間隔離します」の一言。隔離室といっても、バストイレ付の個室で、入院生活は快適になりました。とはいうものの、人との接触が少くなった途端に物足りなさを感じた時、なんと身勝手なことを考えているのかと反省してやっと気づきました。「なぜ私だけが…」と負の考えでいるのではなく、何事も捉え方次第なのではないかと。
 隔離室に移されたことを、仏神の采配と思うようにしました。人間ウォッチングで疲れていた私に「少し休みなさい」と仏さまが与えてくださった時間と考えました。すると些細なことを愚痴っていた自分が、小さなことに幸せと感謝を感じるようになったのです。うどんが食ぺたいなあ…と思った次の日の昼食がうどんだったり。そんな小さなことに感謝することで幸せな気持ちになれました。
 そういった心持ちで一般病棟に戻るとそこは隔離前とはまったくの別世界でした。愚痴を言うことより感謝の気持ちを持つことで、物事の見え方がかわり、まわりで起こることを素直に受け入れられるようになりました。感謝が貪瞋痴から解放してくれたのです。
 入院患者の心は複雑です。なかには深刻な病状を抱えて入院している人もいることでしょう。そういった人に寄り添うことは簡単なことではありませんが、この入院で小さなヒントを得ることができました。
(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員)
あなたのそばにロゴ
この頁の先頭へ▲