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日蓮宗新聞 令和3年11月20日号
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)について
宮村 妙洋

人生の最期を自分で考える時代

 皆さんは「人生の最終段階における医療、ケア」について、どのように考えていますか?
 超高齢化社会の到来、多死社会の中で、老化を基盤とした疾患を抱え、治癒することが少ない病気や病態と付き合い、医療や介護を受けながら過ごしている人が、増えています。
 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は「人生会議」とも呼ばれ将来の変化に備え、どのような、医療やケアを望んでいるのか、どこで、どう過ごし最期を迎えたいと考えているのかなど、本人を主体に、家族や信頼する人、多職種で意志決定を支援するものです。
■自身の思いを叶えるために
 そうした中、80代後半の男性は慢性呼吸器疾患で、誤嘸性肺炎を繰り返し終末期状態でした。
 経口摂取は困難で会話もできない。文字盤を使い意志確認をしたところ「テンテキ・ヤメル」とかろうじて指を差し、意志表示をしたのです。家族や医師と話し合いを設け、本人の意志、尊厳を尊視した上で、点滴を外し数日後、家族に見守られての旅立ちでした。
■その人らしく生き往くために
 先日、声をかけてきたBさん。「今日は、私の誕生日で、生んでくれた母に感謝しているのですが…。脳卒中で倒れた母は意識が戻らないまま胃痩[いろう]を作ったんですよ。長年、反応はないままに、手足は拘縮[こうしゅく]してしまい、母の姿を見るのが、辛くて悲しい。姉弟から強い要望もあって、胃痩を作る選択をしたけど、きっと母は望んではいなかったのではないか? これで良かったのか? もっと家族で話し合いをすれば良かった。元気な時に意向を聴いていたら良かったと、今になって悔いているんです」。
 個々人の置かれた立場はさまざまですが、日頃から本人の意志を尊重し、家族の心構えや、重要性について考え、書き残すことが大切です。万が一、自分の気持ちを話せなくなった「もしも」の時でも、心の声として伝えることが、かけがえのないものとなります。
 また、本人をはじめ、家族や信頼できる人たちの心の負担を軽くして過ごせるのではないでしょうか。
(日蓮宗ビハーラネットワーク会員・
看護師・認定臨床宗教師・スピリチュアルケア師)
※アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は、厚生労働省が普及、啓発を進めて推奨している事業です。
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