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生老病死と向き合う あなたのそばに
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日蓮宗新聞 令和元年11月20日号
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自殺対策基本法
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吉田 尚英
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僧侶も一緒に真剣に悩み、道を探します
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平成10年に国内の自殺者数は3万人を超えました。その後、さまざまな対策の影響もあり、平成30年には2万840人まで減少したものの、深刻な状況は続いています。
平成18年の「自殺対策基本法」成立は、世の中の自殺」に対する認識を変えたという意味で大きな出来事です。その「基本法」には「自殺が個人的な問題としてのみとらえられるぺきものではなく、その背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ…」と基本理念が記されています。自殺を個人の身勝手のようにとらえていた世間の認識を、国が法律によって改めるようにと諭した一文です。
また国と地方公共団体は「基本理念にのっとり、自殺対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する」と、公が自殺対策の実務を担う根拠と責任を明示しています。
さらに「自殺対策は、生きることの包括的な支援として、全ての人がかけがえのない個人として尊重されるとともに、生きる力を基礎として生きがいや希望を持って暮らすことができるよう、その妨げとなる諸要因の解消に資するための支援とそれを支えかつ促進する」とも記されています。かけがえのない「いのち」を尊重し、1人ひとりの「生きる力」を信じ、公が手を差し伸ぺていく。まるで仏の救済を表す経文のような法律です。
誰もが死を選ばざるを得ない状況に追い詰められる危険性がある社会の中で「1人で解決できないときは助けを求めてもよい」そして「助けを求められたら対応する」ことが法律で定められているのが日本という国です。
地域の産業や雇用の実情を分析し、その地域に適した対策を実行するようにと「自殺総合対策大綱」には謳われています。役所の相談窓口に行くと医療・法律・就労などの専門家につなぐ包括支援のネットワークが整っている東京都足立区などの先進的な自治体もありますが、現実には取り組みが有効に機能しているとはいえない状況が多々あります。
それでも、あなたのそばに、救いの手があることを忘れずに、そしてご自身も手を差し伸ぺられるように協力することを心がけてください。
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(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員、自死・自殺に向き合う僧侶の会共同代表)
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