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生老病死と向き合う あなたのそばに
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日蓮宗新聞 平成30年4月20日号
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「つらい」と言える場所はありますか?
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吉田 尚英
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だれでもゲートキーパーになることができます
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昨年、「死にたい」というネット上でのつぶやきを発端とした事件が起きました。自死する人は直前まで迷っていることが多く、覚悟を決めたからといってすぐに死ねるものではないともいわれます。しかし、ネットでやり取りしただけの相手だとしても、「一緒に死のう」の一言が引き金となったのが今回の事件です。逆に、自殺の名所の柵を少し高くしただけで数が大幅に減ったという事例もあるそうです。
悩みを抱えたときに「つらい」「死にたい」と言える場所があり、そのつらさを受けとめてくれる人が1人でもいれば、生きてみようと踏み止まることができるのではないでしょうか。家族だから言えない悩み、職場での誰にも相談できない苦しみ、親しいからこそ打ち明けられないつらさを抱える人、社会から孤立して相談できる場所がない人が多くいます。
悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなけ、見守る人のことを「ゲートキーパー」といいます。ゲートキーパーとなるためにそれなりの知識と経験が必要ですが、それらがなくても、身近な人の悩みに少しだけ心を傾けて、「気にしているよ」というメッセージを送るだけでも助けになるはずです。そんな少しの気遣いをできる人が増えて、「つらい」と言える場所に行き着いたなら、冒頭の事件は起きなかったかもしれません。お寺もさまざまな思いを抱えた人が集う場所であり、その人たちが互いに気遣いながら「つらい」と言える場所でありたいと思います。それでも言えないことがあれば、仏さまに手を合わせ「つらい」とお伝えください。「いつも気にかけているよ」とお声をかけてくださるでしよう。
毎年5月には自死者追善法要を開催しています。大切な人を自死で亡くされた人たちが安心して「つらい」と言える場を準備しています。
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(日蓮宗ビハーラネットワーク会員、自死・自殺に向き合う僧侶の会共同代表)
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