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生老病死と向き合う あなたのそばに
日蓮宗新聞 平成29年3月20日号
あなたのそばに、寄り添いといやし
今田忠彰

障がい者の心を知る−私は、障がい者ですか−

 私は、障がい者の特定相談員として、日々障がいを持つ人に関わっている。
 四肢[しし]に障がいがある身体障がい者、視覚や聴覚、言語に障がいがある、精神に障がいがある、難病の人、などなど、さまざまである。
 そんな障がいを持つ人たちが、病院や施設から出て、地域や街なかで暮らせるように支援するのが、主な仕事である。
 先日、障がい者が講師となって相談員の研修会が開催された。講師はいきなり「私は障がい者ですか」と質問した。
 障がいの「がい」の字をひらがなで書くのには理由がある。通常は「障害」か「障碍」の字を用いることが多い。「障害」の害は害悪の害である。「障碍」の碍は碍子の碍で、電流が通るのを妨げるという意味がある。
 会場の相談員たちは、障がい者の生活支援の専門家たちばかりである。その相談員たちが、いきなりの質問にあっけにとられている。
 「私は害悪ですか、妨げですか」と質問しているのである。相談員たちは、そんなこと思ったこともない。
 講師は次に1枚のスライドを見せた。デパートの大安売りの会場で、車椅子の人が1人で階段の前にいる絵である。車椅子の人は、階段があるので、1人では会場に行けない。
 講師は次の質問をした。
 「どこに障がいがありますか」と。
 多くは@車イスが障がい、A足が不自由なのが障がい、B介助者がいないのが障がい、と考えた。講師は、「階段が障がいです」と言った。
 なるほど。「目から鱗」とはこのことか、と思った。
 「デパートの会場に、エレベーターかスロープがあれば、この車椅子の人は自分で会場に行くことができます。障がいは、階段だけでなく、街中のいたるところにあります。
 道路に、駅の構内に、レストランに、学校に、アパートに…街中障がいだらけです。これを少しでも改善してもらえれば、私たちはもっと自由に外出することができるのです」。
 その研修会以来、私は障がい者のがいの字を、せめて「ひらがな」にしているのである。
 4年後には、東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたって、小池都知事のもと、「東京大改革」が始まっている。街中のバリアフリー化も進んでいる。しかし、街中の障がいをなくそうと努力しても、所詮限界がある。
 そんな時、「お手伝いしましょうか」という一言が、障がい者にとってどんなにか心強いことか。
 地域で一緒に暮らしている障がいを持つ人びとに、優しい一言をかけてください。手助けが必要ないときは、「結構です、ありがとう」と言うでしょう。そんなときは、「どういたしまして」と言えば良いのです。
 哀れみの心ではなく、対等な心での支援がうれしいのです。そんな、一生懸命に生きている障がい者の心を知ってほしいのです。
 (日蓮宗ビハーラ・ネットワーク代表)
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