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生老病死と向き合う あなたのそばに
日蓮宗新聞 平成29年2月20日号
体験しないと分からないこと
三井 妙真

想像の域を超えた先にある現実

 病気やケガをしている人の気持ちというのは、病気もケガもしたことがない人には何となくしかわからなかったり、全く思い違いがあったりします。私自身、この冬は不注意から小指の亀裂骨折と坐骨神経痛で左腿の付け根に激痛。この状態を四肢に異常のない方に話しても「歩くのが大変」としか考えが及ばないと思いますが、実はもっといろいろな動作ができなくなります。
 骨折だけの時は、腫れと痛みで靴下すら履[は]けず12月になっても素足に雪駄[せった]。立っているのと歩くのが難しいくらいでしたが、神経痛が悪化してからは起き上がる・腰かける・正座・衣類を穿[は]く、坂道や階段は上る方がより辛い。
 今まで苦にも思わなかった10bの移動が休憩をしたり、痛む箇所を押さえながらでなければ行けない状態になるなんて思いもしません。しかもこんなに頑張って歩いているのに、かなりご高齢と見受ける人にまで追い越される。
 さらに、作務で痛めた右肘も、手に力を入れる・握る・持ち上げる・捻るという動作もきびしく、箸すら持てなくなりました(できなくなったことはもっとたくさんありますが)。骨折した日から数えると3ヵ月が経ちましたが腕と股関節はいまだに完治はしていません。
 思うように動けないことを「悔しい」と思う反面、年齢に関係なく四肢に故障や痛みを持ちながら日常を過ごすのは、今まで考えたことのない筋肉などを使って動いていたこと、体力以上に精神力を失うのだと知ると同時に、何の支障もなく快適に歩けることは決して普通のことではなく、とても有難く幸せなことだとしみじみ思いました。
 10年以上前のことですが、ビハーラ活動講習会の講義で「高齢者疑似体験教材」を身に着けて、高齢者の視覚・聴覚・身体や関節に負荷をかけ、高齢者が普段常に感じている不自由さを体験しました。
 余談ですが、若い健康な男性が同じように疑似体験をしても、おもり入りベストや脚・腕の負荷サポーターはあまり障害になっていなかったようでした。しかし、自分が実際不自由な身になってみると話は違います。思い通りに動かせないもどかしさのほかに、見た目には分からない動かした時に伴う痛みやこわばり。また、常に感じている痛みがあるということに気が付きました。
 病人、けが人のサポートをする時は相手のテンポとタイミングに合わせて行うのがよいと思います。
 (日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員)
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