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生老病死と向き合う あなたのそばに
日蓮宗新聞 平成27年5月20日号
記 念 日 反 応
吉田 尚英

仏さまは、いつでも寄り添ってくれる

 大切な人との死別は大きな悲しみや苦しみをもたらします。死別後何年もたって心の落ち着きを取り戻したように感じていても、命日や誕生日、お盆・お彼岸などの行事、満開の桜や年末の喧騒など思い出が深い特別な日が近づいたときに、気持ちが落ち込んだり、ショックがよみがえったりすることがあると思います。これは「記念日反応」といわれ、大切な方を亡くしたら誰にでも起こりうることなので、また悪化してしまったと不安になったり、自分を責めたりしないでください。
 法事(年回法要)は本来、命日に仏さまの前で故人とゆっくりと向き合う場であるはずです。しかし、法事の施主となる人にと手手は、「記念日反応」に揺れながらも、寺との連絡や親族の接待に追われ、心身ともに消耗してしまうことも起きます。
 子どもや孫の前で弱いところを見せたくないと無理してがんばってしまうこともあるでしょう。
 「いつまで落ち込んでいるの」「またクヨクヨして」などという周囲の言葉につらい思いをすることもあるでしょう。
 せっかくの法事が苦しいものにならないようにするためにも、「記念日反応」について正しく理解しておくことが大事です。
 不眠や食欲不振などの体の不調、悲しみや不安を抑えきれなくなるなどの心の変調は、自分の体と心を守るための正常な防御機能です。無理に我慢したり、がんばりすぎたりせずに、安心して泣いたり怒ったりできる場所を確保することが必要です。
 そのために、一人きりで部屋にこもって泣くのも一つの方法ですが、そばに寄り添って黙って話を聞いてくれたり、一緒に泣いてくれたりする人がいるときっと救われることでしょう。ご身内やご友人にそのような方がいない場合や、その大事な方に先に逝かれてつらい思いをするということもあるかもしれません。
 そのようなときのためにも信仰があるのだと思います。「自我偈[じがげ]」には、永遠のいのちを持つ仏さまが、いつでも・どこでも・だれにでも寄り添っていてくださると説かれています。突然「記念日反応」に襲われた「そのとき」にも、仏さまがそばで「好きなだけ泣いていいよ」とおっしゃって寄り添ってくだざるのです。仏さまが身近に感じられるように日々おつとめに励み、苦しい時にはさらに一心に祈りを捧げ、仏さまに救っていただくしかないのだと思います。
 (日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員、自死・自殺に向き合う僧侶の会共同代表)
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