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生老病死と向き合う あなたのそばに
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日蓮宗新聞 平成26年8月20日号
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みんなの心を 安らかに
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三井 妙真
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その人にとっての“安心”を考える
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ある日、法事の方が玄関から出ていくなかにSさんがポツンと立っていました。私は気が付かなかったことを慌てて謝りましたが、そんなことは気に止めず神妙な面持ちで話し始めました。
Sさんは5人姉妹なのですが、長姉Nさんは最近圧迫骨折し自宅でリハビリ中と聞いていましたが、先日末期の肺ガンが見つかり入院中とのこと。1年ほど前に次姉のOさんが肺ガンで亡くなられており、Sさんは「Oが寂しくてNを呼んでるんですかねえ。亡くなる前に気にしていた灯籠もお墓に建ててあげたのに、やっぱり成仏(ご供養)が足りないんですかねえ。同じ肺ガンなんておかしいですよねえ」と心配そうに尋ねます。
「いえいえ、そんなことはありませんよ。OさんはSさんたちご親族が毎日お祈りしてくれているんだからちゃんと成仏してますし、ましてガンは病気なんですよ。Oさんが悪さしてるなんて思わないで下さいね」と答える私。
あまり納得していない様子だったので、何と言って慰めようか考えていると「お寺さんでお祓いをして欲しい」とSさん。「お寺はお祓いはしないんですよ。でもNさんに効くご祈願をしましょうね」と二人でご祈願の内容を考えてみたけれどなかなかぴったりのものが思い浮かばず、SさんもNさんの病院に行くというので、ご祈願をしたカード型お守りを作っておきますと約束をしました。
数日後、ご祈願をしたカードお守りを持ってNさんのお見舞いに行き、Nさんの手を握って話しかけ、お守りを身体のすぐ近くに置いて、目が覚めるのを待ちながら、妹さんだちとお話をしていました。
すると、また「成仏」の話がでたので「住職を含めみんなでお葬式をして送りたしたのだから足りないことはありません。Oさんはとても家族思いだから、きっとNさんを見守っているんですよ」ともう一度伝えました。「それでも今まで元気だったのに最後が肺ガンなんて…」と言われてしまうと何とも答えることができませんでした。
その3日後に「母が亡くなりました」とNさんの息子さんから電話がありました。私はお見舞いに行くのが遅すぎたのか、私の力不足だったのかと自責の念にかられました。
葬儀の後でご親族からは「お棺に移した時にNの両手に握らせたんです。だからきっと心強かったと思います」「入院した時から危篤だったのだからお守りをいただいてきっと叔母は安心していたと思います」と親族から言っていただけて安堵する私でした。
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(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員)
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