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生老病死と向き合う あなたのそばに
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日蓮宗新聞 平成26年5月20日号
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大切なもの
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村瀬 正光
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妻のためにこれからの時間を過ごしたい
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病は辛いものです。しかし、時には病になり9えてくるものもあります。
私は僧侶で、医師として緩和ケア病棟で勤務しております。そこでの経験を、お話したいと思います。ご本人やご家族からは了承を得ていますが、仮名と致します。
上杉さん、60代男性の方です。奥さんと2人暮らし。趣味は旅行で仕事を定年退職し、これから奥さんと方々へ旅行に行こうと思っていた矢先、胸がつかえる感じがあり、総合病院の外来を受診し、食道がんと告知されました。手術のため外科に入院。しかし、手術前の再検査で肺と骨に転移が見つかり、手術中止。そして、緩和ケア病棟を紹介され、私の外来を受診されました。
上杉さんは「入院させて欲しい。かかあが、口うるさくて、家じゃゆっくりできない」と。奥さんも「私が心配しているのに、まったく人の話を聞かない。高いお金出して、健康食品ばかり飲んで…。奇跡を起こすんだって」。精神的に辛そうでしたので、入院としました。数日すると落ち着かれ、がんセンターへの紹介を希望されました。
「前の病院では、いきなり告知され、何も分からないまま、ここを紹介されて…。このまま、諦めるのが辛くて」と。次の日、夫婦でがんセンターに行かれました。
帰院後「いろいろ説明してもらいました。そして、積極的な治療はお勧めできないって。前の病院の先生はあまり説明もしてくれなくて、冶るんじゃないかと、いろいろ試したけど…。俺、病気になって自分のことばかり考えていて、あいつのことまで考えていなかった。診察が終わった後、病院のロビーで2人でしばらく泣いていました。あいつがそっと俺の背中を撫でながら一緒に泣いてくれたんです。ああ、辛いのは自分だけじゃないんだ。そして、大切なものが何かよく分かりました。今まで一緒にいて、それが普通で…。迷惑ばかりかけてきたから、あいつのためにこれからの時間を過ごしたいと思います」。数日後、温泉に行ってくると、笑顔で奥さんと退院されました。
日蓮聖人は夫婦の絆を「華[はな]と果[このみ]のように、根と葉のように相添うもの」と述べられています。普段は近すぎて見えない「大切なもの」、あなたには見えていますか。
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(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク世話人、医学博士)
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