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生老病死と向き合う あなたのそばに
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日蓮宗新聞 平成25年11月20日号
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妻が告知してくれないんです
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今田 忠彰
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やりたいことをやらせてあげたい
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70代後半のAさん、一人娘が嫁いでからは妻と2人暮らし。若い時はコックとして働き、子育てを終え、引退してこれから妻と2人で温泉にでも行こうかという矢先に、急に息苦しくなって救急搬送された。診断の結果、末期の肺ガンだった。医師からは余命半年と宣告されたが、妻は「可哀想で、とてもお父さんには本当のことは言えない」という。「重い急性肺炎」だということで、闘病生活が始まった。
抗ガン剤治療は見送ったが、放射線治療が始まり、痛み止めの麻酔があったりと、医師や家族が隠しても、周りの入院患者たちの情報を参考にして、自分が末期のガンであることは薄々察しがついている。
「私は末期のガンだろう」と聞きたいが、妻が本当のことを言えずに辛い思いをするだろうと考え、Aさんの方が気を使って深くは追求しない。
そんな折、奥さんから知らせを受けて、病院に駆けつけた。
ご信者さんとして長年昵懇の間柄、時節の挨拶を終えて枕元に座り込んだ私に、「妻が告知してくれないんですよ」とポツリ。
予め状況を聞いていた私は、Aさんの訴えを傾聴することに心掛けた。
家族より患者の方が、家族に心配をかけないようにと気を使っている。Aさんには、やっておきたいことがあるようだ。
本人から頼まれたわけではないが、私は奥さんや娘さんと相談することにした。娘さんは告知には賛成の意向だったが、奥さんはしぶっている。
ご本人は、疑心暗鬼になっています。薄々病状については察しがついているようですよ。本人にはまだやり残したことがあるようですから、本当のことを話して、やりたいことをやらせてあげたらどうでしょうか。
告知をするといっても、何でもかんでも話してよいわけではないだろう。医師・看護師とも相談し、内容、時期、治療方針、告知後の対応など、十分に準備をする必要がある。薄々察しがついていたとしても、医師や家族から告知をされれば、それなりに衝撃は大きいもの。告知後の本人の心のケアが大事です。もしかしたら、ガンじゃなかったのかもしれない、という奇跡に近い望みを持っているかもしれないから。
このように家族が悩む問題だから、日ごろから自分は告知をして欲しいのか欲しくないのか、家族と話し合っておくことが大切です。
私は告知して欲しい。お題目に身を任せながらも、自分の最後は自分らしく終わりたいと考えているから。
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(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク)
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