日蓮宗 ビハーラ・ネットワーク
 
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(宗報 平成20年4月号 第241号 改訂 第72号)

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平成19年度 ビハーラ活動実践講座報告書
 
  日 時 平成20年1月22日
  場 所 日蓮宗宗務院
  参加者 42名

 
1、開催の経緯とねらい
 
 近年、病気や高齢化、障害などで苦しむ人達に、精神的な癒しや安心が得られるよう支援する活動に対して宗教者への期待が高まっている。いわゆるビハーラ活動である。宗門では先にビハーラ活動の基礎知識修得のため、「社会教化事業講習会」においてビハーラ活動入門編を開催した。この度、日蓮宗のビハーラ活動を推進し、実践を志す人たちのために「ビハーラ活動実践講座」を開催し、ビハーラ活動の具体的方策を学んだ。
 
2、開講式
 
 法味言上に引き続き梶山寛潮伝道部長より、「高齢化社会において精神的・肉体的苦しみに寄り添う菩薩行は仏子としての本分であり、ビハーラ活動は宗門や社会から求められている大切な活動です。本日の講習会が参加された皆様が、自らビハーラ活動を実践しさらに周囲にも広めていただくことを期待します」との挨拶を頂いた。今回の講習会を企画運営したNVN(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク)代表の柴田寛彦師より「ビハーラ活動は生老病死に悩み苦しむ人々と苦しみを共にし、精神的・身体的な苦しみをとり除き、安心が得られるよう支援する活動です。皆様には今日一日有意義な学習をしていただきたいと思います」と挨拶があった。
 
3、講義と実習
 
まる1「お見舞いの心得 ―『千代見草』に聞く」
         講師 柴田寛彦師(秋田県 本澄寺住職)
 柴田師は、導入としてパワーポイントを用いて「ビハーラ活動の理念と実践」について解説した。
 柴田師は、「病者の苦痛には肉体的苦痛・精神的苦痛・社会的苦痛・霊的苦痛があり、病者は宗教に病を治癒に導く神秘的な力・精神的に平安な悟りの境地の獲得・死後の安楽などを求める傾向にある。日蓮宗のビハーラ活動は法華経安楽行品に説かれる安楽の供養をはじめ、六波羅蜜、四無量心、四摂法の実践であり、すべての人々が法華経とお題目の教えに触れ仏になることを願い導く法華菩薩行です」と解説した。さらに、仏教的霊性を再確認し共に霊山往詣するための葬儀・法要儀式成立のため、死生観を再構築する必要性を強調した。
 次に『千代見草』(伝 心性院日遠著)の現代語訳を元に、看病の心得と臨終行儀について具体的に説明した。千代見草によると、臨終を迎えるための心構えを、臨終の用意としての十戒として取り上げ、日頃から「殺生・盗み・邪淫・妄語・大酒・説四衆過悪罪・自讃毀他・慳貪・瞋恚・誹謗三宝」等の心の歪みを正さなければ成仏できないと説かれている。柴田師は、自ら編集した『千代見草』の現代語訳を紹介しながら、これらについて経験を踏まえた具体的な解説を加えた。ビハーラ活動の実践につながる内容であった。
 
まる2「ビハーラ活動に生かすお見舞いのポイント」
         講師 林 妙和師(愛知県 道心寺修徒)  
 日蓮宗教師であり看護師・保健師でもある林師は、導入としてお見舞いの予備知識を説明し、豊富な経験から「お見舞は病人と個別に、しかも全人格的に向き合うことから始まります」と解説した。
 お見舞いのポイントとしては、本人の想いを尊重することが基本姿勢であり、傾聴しながら共感し心のケアをする・患者の自尊心を傷つけない・患者の情報をより多く集める・プライバシー保護への配慮・家族や周囲の人へのケアなど活動事例を通して具体的に解説した。
 続いて金 朋子氏(老人保健施設アウン・介護福祉士)と共にお見舞いに活かす介護のポイントについて解説した。クッションを背もたれに置くと良い姿勢になる・食器の滑り止めに濡れタオルを敷く・スプーンなどにハンカチを巻くと持ちやすくなる、紙コップは切り込みを入れることでこぼさないなど具体例を紹介し、参加者も介護する側とされる側の立場になってそれぞれ実習した。
 高齢者疑似体験実習は休憩時間を利用して行なわれた。希望者は耳栓・眼鏡・重荷チョッキ・膝サポーターなどの装具を身につけ、加齢に伴う高齢者疑似体験をそれぞれ実習した。
 
まる3「平成の駆け込み寺『サンガ天城』の実践から」
         講師 戸澤宗充師(東京都 一華結社教導)
 戸澤師は33歳のとき夫を交通事故で失い、2人の子供を養育した後、46歳で出家し、2003年8月68歳で「現代の駆け込み寺−サンガ天城」を設立した。「世の苦を見つめて生きたい。さまざまな事情で厳しい生活から抜け出せないでいる女性たちの役にたちたい」との思いからだった。
 戸澤師は設立時の苦労談につづき、リストカットによる自殺願望の女性、DV(ドメスティック・バイオレンス、夫や恋人からの暴力)により離婚後うつ病になり所持金500円しかない女性、両親から愛された記憶がないという30代の女性の事例などを紹介し、いかに女性達と向き合い立ち直らせたかを具体的に紹介した。
 「DVや金銭問題などさまざまな問題を抱え、生きることに悩み傷つき、天城に駆け込んできた女性達に、自分自身が味わった辛い体験と信仰から生きる智慧を伝えたい」という戸澤師の言葉が印象的だった。
 
まる4質疑応答(一部紹介)
質問「『千代見草』を現代の医療に活用するときの注意点をお教えください。」
柴田「文章そのままを外部で使う場合は人権的配慮が必要だと思います。しかし、宗教的見地から見た場合は問題ないと思います。」
質問「サンガ天城の経営基盤を教えください。」
戸澤「すべて布施でまかなっています。生活費が払えない人は払えるようになってから払ってもらっています。ほとんどの場合、親が送ってくることが多いようです。」
質問「僧衣などでお見舞いに行くと嫌われると聞きますが。」
林 「私の病院では道服と折五条の僧衣は日常的です。病院や施設によっては嫌うところもあります。」
 
4、閉講式
 
 梶山寛潮伝道部長導師による法味言上の後、参加者代表に、修了証が授与された。梶山部長は「ビハーラ活動は釈尊在世の時代から、出家者が修行として為すべき活動でした。どうぞ皆さん、周りの人達に、この講座で得たことを伝えて下さい。そして小さいことから少しずつ活動を始めていただきたいと思います」と挨拶した。
 柴田寛彦NVN代表は「理論はさておき、一歩ずつ活動を踏み出してください。私たちは、走りながら考えていく、でいいではないでしょうか」と挨拶した。
 最後に、近澤雅昭NVN事務局長よりNVNの活動紹介と入会への誘いが行われた。
 
5、参加者の声(アンケートより抜粋)
 
 アンケートの結果、講義・実習に対しては概ね好評を得ることが出来た。ここでは今後の講習内容や宗門への要望・参加者の現在行っているビハーラ活動について報告する。

A、要望事項について
まる1ビハーラ活動の実習として病院などに行く機会がほしい。
まる2ビハーラ活動ができる宗立の病院や老健施設をつくって欲しい。
まる3より多くの実践例をお聞きしたい。
まる4他宗派の方やホスピスでのビハーラ活動の実践例を聞きたい。
まる5社会が僧侶に対してどのような活動を望んでいるのか知りたい。
まる6精神障害と日蓮宗の修法との関係を知りたい。
まる7介護の実践を多くしてほしい。
まる8寺庭婦人会対象の講習会を実施してほしい。
まる9ビハーラ活動の教学的・宗学的知識を講義に取り入れるべきだと思う。
まる10各管区・教区での講習会を開催してほしい。
まる11講義中は館内放送は遠慮してほしい。

B、参加者が現在行っているビハーラ活動について
まる1病院へのお見舞い活動をしています。
まる23年間福祉施設でビハーラ活動をしています。
まる3傾聴ボランティアをしています。
まる4檀家さんへのお見舞い活動をしています。
まる5年1回ですが郡山市の全国視聴障害者24時間マラソンに協力しています。
まる6病院での「ターミナルケア研修会」に参加し、患者さんにビハーラ活動しています。
まる7独居老人へのお見舞い活動をしています。
まる8カウンセリング活動をしています。
まる9うつ病患者のケアをしています。
まる10遺言作成、後見人選定などのお手伝いをしています。
 
6、今後に向けて
 
 アンケートから解るように実践編の参加者は、より具体的実践的な講義を希望している。参加者の多くが既にビハーラ活動を実践しており、かなりの問題意識を持って受講していることがわかる。
 また、昨年のアンケートと同様に中央だけでなく各教区や管区単位で講習会開催の要望があった。
 今回は寺庭婦人を含め寺族の方8名の参加があり、この方たちにもNVNからビハーラ活動実践講座修了カードが授与された。ビハーラ活動が幅広く展開されていることを感じた。より多くの希望があるということは、それだけ期待も大きいということでもある。
 宗門では「立正安国・お題目結縁運動」実動の年を迎えた。今後に向け、受講以外の聴講等も考慮していただき、幅広い受け入れ体制と一層充実した講習内容を期待したい。
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