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全国社会教化事業協会連合会
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認知症高齢者と共に暮らす
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甲府市妙本寺徒弟 金沢惠俊
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平成16年8月1日、私の思いを込めたグループホーム天鼓[てんく](認知症対応型共同生活介護)が誕生しました。
以後の歩みを、5月29日、日蓮宗ビハーラネットワーク総会の日、活動報告させていただくことが出来ました。
昨今は、介護の世界も不正事件でマスコミに騒がれております。利益追及というスタイルの中では、社会資源として貢献しなければならない使命が見失なわれてしまいます。
今、この急激な高齢化社会は、政治レべルだけでなく、社会全体でさえ受け入れや支えが出来ずにおります。
第一に「認知症」という病気の理解が出来ていません。さらに「認知症の人」という存在を扱ってゆくことのエビデンスが不足しています。国も大急ぎで研究し対応マニアルを作っているのですが、家族も社会も十分対応が出来ていません。
介護の世界では、かつては「身体介護」つまり、オムツ交換や入浴などの作業的介護から、「認知症ケアは心のケア」という特化した介護のあり方に変化、直面しています。
外見的に何でもない元気な高齢者の突拍子もない行動を追いながら、その内面を見つめ裏側を探究し、相手の価値観に添って介護をするというワザを、要求されている現場であります。
医師も看護師も、ケアマネも介護職も、共に学びながら対応しつヽあるという現場であります。
家族は、この「病気になった父や母」をすぐ病院に連れて行くこともしない。それでもどうも変だ、と思って一、二年のうちに連れて行くのは、12.7%であります。二年以上も経ってからやっと病院へ、という人が、66%。このように脳の中の病気は、家族にも理解されにくいのです。
社会全体から言うと、「認知症」というと「暴力老人」のように思っている人や「人格否定」さえしている人がいます。良く聞く言葉として「ボケてるから、何もわからないんだ。何言っても無駄だよ」こんなこと耳にしたことありますね。
いいえ、何でもおわかりなのですヨ。心の奥底にある感情、時には知性や社会常識などハッとさせられることがあります。悦びや悲しみ、怒りの感情も持っておられ、正しく発動されております。
私がグループホーム開設の挨拶廻りをしていた時、近所の若い奥さんが「もし入居の老人が外へ出ちゃったらどうするんですか?」と質問されました。
又、つい先日夜電話がありました。「お年寄りがじっと窓の外を見ていた。うちの子が怖がっていたー。」その我が子にどう対応したかは想像でしかありませんが、そのほうがずっと怖いように思います。
認知症を取りまく社会状況は、天鼓の囲りでも、これが現実です。
家族も、あれダメ、これダメ、と否定して益々不安と混乱を深めている姿も見受けられます。これは認知症介護のやり方がわからないからです。おまけに24時間の介護疲れ。医療費、介護費の負担など、家族介護も限界です。早目に専門家への相談をすることも大切です。
グループホーム天鼓は、介護保険施設として介護度1〜5に認定されてなお認知症状のある方が入居出来る小規模な施設です。二つのユニットで18名入居可。
同じ建物の別室ではデイサービスをやっているので日々の交流があります。いろんな人の出入りがあってもいつも笑顔で受け入れています。職員と間違えられる方もいらっしゃいます。スウェーデン福祉研究所のマリアさんがいらした時も、職員ぬきで、みんなでマリアさんを囲んでお話しているではありませんか!「マイネイムイズ…」と聞こえました。すごいパワーです。とても「知的能力の著しい低下…」などという定義どころではありません。そのマイネイムイズといっていたA様も最近は「何が何だかわからなくなっちゃった」とおっしゃり、一日中外出し続けております。職員は、手をつなぐ時もあり、見え隠れしながらついて行く事もあります。そのA様は、アルツハイマー性の認知症です。
認知症を定義で言うと、一言では「脳の病気」です。一度正常に発達した脳が、さまざまな原因で障害を受け、脳の器質的変化が起こったこと、それが原因で知的能力が衰退し、出てくる症状のことであり、日常生活に支障が出る状態を言うのです。
現在の日本では、アルツハイマー性が56%と最も多く、脳血管や脳梗塞などが原因のものが20%、他に色々な原因があります。
天鼓では半々ぐらいかと思われます。入居時までに原因疾患が判明している方は少ないです。ともあれ、脳の器質的変化という基本症状(中核症状)があり、その上で周辺症状と呼ばれるさまざまな行動が発生し、日常生活能力を妨げます。認知症の方は普通の人の三倍の早さで老化が進み、最後寝たきりになるまで、6、7年という方もおられます。
環境の変化が行動の障害になりますが、天鼓ではご入居されてから十日位で、仲間や職員と馴れて、生活リズムを作ってゆきます。
生活全般を追って行きますから結構忙しく過ごすことになります。
起床、口腔ケア、朝食、ラジオ体操、掃除、食事作り、畑作業に追われ、病院への受診や外出の行事、理学療法士の先生が来て、生活指導、三味線の先生、美術セラピー、音楽セラピー、回想法…。
この日々の生活の中で、家庭では見られなかった人格的なまとまりのある姿を再発見しているのです。
天鼓では、能力に応じて何にでも参加しています。この人には出来ない、などと決めつけず、いろんな事に挑戦してもらっています。
2005年に総人口の5人に1人が65歳以上でそのうち13人に1人が認知症で、その数190万人だそうです。そして2015年には280万人となるそうです。
特に、若年性の認知症が急増しているそうです。「明日の記憶」(萩原 浩著)は、若年認知症のことを書いた本ですが、渡辺謙さんが主演で映画化されました。現役バリバリの方が自己喪失してゆくさまは、実に生々しく感じられます。
天鼓の理念は「ご利用者様中心」、で私たちは「心に恥じない介護」をしよう、行動の全ては「自分が源泉」として、責任をとるという在り方を追及しています。
4年以上も「実践心理講座」として、外部講師による研修を毎月続けて来ました。
介護にふさわしい人材を育てるのは、本当に大変な事です。人間の質が問われるからです。
『餘人[よにん]の読み候は、口計[くちばか]り言計[ことばばかり]は読めども心に読めず、心は読めども身に読まず色心[しきしん]二法共[にほうとも]に遊ばされたること貴[とうと]く候へ…』日蓮大聖人のお言葉をかみしめております。
中核症状は変えられないけれど、心地良い環境の中に生活すれば、周辺症状は緩和されるのです。この緩和ケアこそ、認知症ケアなのです。今日のこのおだやかなひとときが私たちの宝ものです。
毎日、ご人居者様に助けられ、教えられているこの時間を、こよなく大切に思い、感謝しております。
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合 掌
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