日蓮宗 ビハーラ・ネットワーク
 
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(宗報 平成17年9月号 第210号 改訂 第42号) (上)

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全国社会教化事業協会連合会報告
ビハーラ活動のすすめ(下)
日蓮宗ビハーラ・ネットワーク 世話人代表
秋田県 本澄寺  柴田寛彦  

 研修会報告まる2
 平成十六年度記念講演は、山梨県の医療法人「どちペインクリニック」理事長の土地邦彦先生を講師に迎え、「終末期医療の現場から」という演題で講演して頂きました。甲府市永照寺住職の吉田永正師が、ボランティアとして終末期にある患者さん方への精神的なケアに携わっておられるご縁で土地先生をお招きした次第です。
 先生は、一九九二年に「どちペインクリニック」を開業、一九九六年に「医療法人どちペインクリニック」を設立、訪問看護ステーションも開設され、二〇〇三年にホスピス機能を有する「玉穂ふれあい診療所」を開設されました。
 ホスピス及び在宅での医療は、患者さんが病気と共に生きることができる、患者中心の生活、医療者が患者に合わせることを目標とするという点で、病院の医療と大きく異なっており、先生のところでもそれを目指しておられます。
 在宅医療の良いところは、患者さんが自分中心の生活が送れる、毎日家族の顔を見られ話が出来る、慣れた空間の中で安心して休めるという点であり、病院での予想よりも長生きできることが多いとのことです。
 在宅緩和ケアのポイントは、痛みからの解放、患者さんへの病状の説明(告知)、QOL(生活の質)の充実、家族への援助、という点です。
 「玉穂ふれあい診療所」は、緩和ケア(ホスピス)機能を有した在宅と有機的に結びついた入院施設であり、総合診療機能を有する外来施設であり、市民運動に支えられる医療機関です。
 患者の自宅に一番近い入院施設である終末期医療を支える診療所は、これから大事になるだろうと思われますが、現状では経営上の問題もあってまだまだ普及しておらず、今後生活の場に延長した診療所というものが、もっと増えて欲しいと話していました。
 先生が実践しておられるように、たとえ悪性の疾患で末期状態になったとしても、出来るだけ最後まで自宅で心安らかに生活できるような医療体制が普及してくると、それにともなって、そのような患者さんの近くで精神的な支えになってあげられるような存在がますます必要になってくるということでありましょう。私たちのビハーラ活動の重要な役割がここにあると思います。

 研修会報告まる3
 順番が前後になりましたが、平成十三年のNVN設立総会で、飯田女子短期大学教授の藤腹明子先生から「仏教と看護―これからのビハーラ活動を考える―」と題する講演をいただきましたが、その折に示された「藤腹明子の看取りの心得と作法十七か条」は、看護師の方々のための看取りの心得ではありますが、私たちが病苦や死苦に直面している人と接するときの心構えとしても参考になるのではないかと思いますので、次に掲げておきます。
第 一 条  看取りの最初の心得は、看取りし者もいつか必ず死を迎えるという自覚なり。
第 二 条  看取りとは、死の前には無力なる、何もできない自分自身を知ることから始まるなり。
第 三 条  およそ看取りの対象は、末期がん患者のみならず死に臨む人すべてなり。
第 四 条  看取りの期間に長短あれど、およそ三月と心得よ。
第 五 条  看取りとは、限りなき他者への関心なり。傍らに居り、耳を傾け、語り合うことこそ基本なり。
第 六 条  信頼は、事実を告げることから生れるなり。
第 七 条  看病・看死・葬送は、切り離しては考えられぬものと心得よ。
第 八 条  看取りのめざすは、この世からあの世への橋渡しなり。
第 九 条  病者の「願い」を軸として看取ることが大事なり。
第 十 条  看取る者は、医者や看護者のみならず、仲間と共に看取るなり。
第十一条  看取る者、それぞれ役割を心得て、苦痛の緩和をめざすべし。
第十二条  看取る者看取られる者共々に、最後の瞬間(とき)に「救い」をめざすべし。
第十三条  看取りの質は、看取る者の生死観が左右する。
第十四条  看取りにおける善し悪しを決めるは病者の思いなり。「あなたに出会えてよかった」と、言われて気づく評価なり。
第十五条  人の臨終・死後処置にかかわるは、偶然でなく必然なり。縁あって選ばれたと思うべし。
第十六条  看取る者、看取られる者共々に、心残りや憂いなく、「これでよかった」と思えるように励むべし。
第十七条  看取りとは、看取りし後も続くもの、残される家族のケアも看取りなり。

 研修会報告まる4
 本年平成十七年度の講演会には、長岡西病院のビハーラ病棟で長年ビハーラ僧として患者さんと直接関わってきた経験を持つ、木曽隆さんのお話を伺いました。
その中で、ビハーラ病棟開設の理念的な支柱の一人であった田宮仁さんの言葉として、次のような話を紹介してくれました。
「最初にビハーラ病棟を立ち上げた時に、田宮仁という先生が、お坊さんの役割として、ゴミ箱になってもらいたい、『仏教者ゴミ箱論』を提唱しました。
 『ゴミ箱は、部屋の真ん中にあると邪魔になります。しかし、ないと部屋は汚れます。部屋の隅っこにあって、嫌なもの汚いものをみんな受け止めてあげる。お坊さんは、そういう役割に徹していいのではないか。表にしゃしゃり出て、布教します、伝道しますという態度を押し付けてほしくない。悩める人、苦しんでいる人が中心であってほしい。だから、聴くことに徹してほしい。患者さんの苦しみや悩みを傾聴する、ただだまって傾聴する。そしてその悩みや苦しみを少しでも共有できるようになれればいい。』ということを言われました。そんなことが私たち病院でビハーラ活動をする僧侶(ビハーラ僧)の役割だろうと思います。」と、こういうお話でした。
 私たちが病める人と接するときには、心の奥底にはもちろんいつでもお題目弘通、法華経との結縁によって共に霊山往詣することをめざす志を持っているわけですが、それをことさらに表に出すことは避けなければいけない場面も多々あることを心得ておかなければならないということでありましょう。『ゴミ箱』としての存在、含蓄のある表現だと思います。

 おわりに
 日蓮宗のビハーラ活動は、まだまだ歴史の浅い活動ではありますが、老苦や病苦、死苦に悩む人々に、真の安心をもたらそうとする菩薩行の実践でありますから、立正安国をめざす我が宗門人のなすべき社会教化活動であるというにとどまらず、仏教界全体の再興につながる活動であろうと考えています。今後益々内容の充実を図ると共に、講習会受講者を中心として各地でビハーラ活動を実践する宗門人の輪を広げていきたいものと念願しています。
 今、NVNという全国的なネットワークが確立できたわけですが、今後は、各地域ごとにグループを作って情報交換をしながら、地域の病院や施設やボランティア・グループなどと密接な連携を持った、地域のネットワーク作りを進めていければと念願しているところです。宗門諸聖のご協力とご支援をお願いします。

以上
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