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生老病死と向き合う あなたのそばに
日蓮宗新聞 令和3年5月20日号
無力から救い出されてほしい
太田 喜久子 医師

観世音菩薩を届けるSOSの一手

 コロナ感染症によりこの1年、恐怖と不安の生活を強いられ、今や第4波が到来し、自殺者の増加が表出してきました。警察庁の2020年確定値では11年ぶりに増加となっています。私はコロ
ナ禍になった昨年春に、長年通院していた2人の自死に遭いました。突然のコロナ禍の自粛の中で孤立した生活が一因と思えました。
 現在も、20歳代の女性の「死にたい」気持ちを訴える受診が続いています。そんな患者さんから話を聞くと、家族との間に問題を抱えながら10代での自殺は未遂に終わり、社会人となった後、職場でのミスや対人関係の問題を抱え再び死にたいという気持ちを抱くようになり受診となったそうです。夜中、急に死にたい気持ちが強くなると、その人は言います。治療者側としては精神科病院への入院も考えましたが、窮地の策として「念彼観音力(ねんぴかんのんりき)」を唱えることで苦しみから救われるという話をしました。
 「念彼観音力」と何回も出てくる法華経・観世音菩薩普門品第25は観音さまが出てくる物語で観音経ともいわれています。さまざまな苦しみから逃れたいときは「観音菩薩さま」と一心に唱えればこの音声に観じて観音菩薩がその災難から救い出してくれると言う驚くぺき利がありますが、それは無条件に与えられる救いの世界でもあります。最後は観音菩薩のありがたさを得たときからさとりを求めようと決意する言葉で「阿耨多羅三藐三菩提心(あのくたらさんみゃくさんぼだいしん)」で終わります。観音さまへのご利益信仰は、次第に深い信仰を得る入り口で、普門といってあまねくすぺての人びとに開かれた門なのです。「念彼観音力」と繰り返し唱えると無力から救い出されるように思えたのです。
 自殺は「生きる権利という究極の基本的人権が、社会構造的要因によって侵害されている、強いられた死」なのです。自死の背景はさまざまですが、孤立・孤独も大きな要因となります。自殺防止対策は国の責務なのです。日本の政府には内閣官房に「孤立・孤独対策担当室」が設置され、その効果が期待されます。今後の国の責任を問うていく視点を持ち、国の方向を見ていく一方で、コロナ禍でどうしようもなく死にたい気持ちにとらわれている人に、観世音菩薩を届けるSOSの一手があることを知ってもらいたいと思うのです。
(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員)
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