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生老病死と向き合う あなたのそばに
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日蓮宗新聞 令和2年4月20日号
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聴く・訊く・聞く
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吉田 尚英
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共感・理解・仏様の声
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「きく」を辞書で引くといくつかの漢字と意味が並んでいます。その中から「聴く」「訊く」「聞く」の3つについて考えてみます。
●「聴く」は、注意して 耳に入れるの意。
「聴」には耳と目と心という文字が含まれています。耳だけでなく、目も心も使って相手の思いを理解しようとする行為が「聴く」です。
耳を傾けて聴く「傾聴」とは、言葉以外に表情や行動に注意を向け、相手の言葉を最後まで聞き取り、言葉の背後にある感情も受け止め共感を示すことです。つらい気持ちや悩みを聴いてもらえたら、心が軽くなったと感じることでしょう。相談を受ける際には、耳と目と心を使った聴き方を意識してみてください。
●「訊く」は、尋ねる・問うの意。
「訊問[じんもん]」というと取り調ぺや裁判など問い詰めるイメージが強いと思います。しかし、相手の言わんとするところを尋ね、確認し合うことは大切なことです。言った・言わない、聞いた・聞いていないなどのもめごとも、上手な訊き方をすれば避けられることでしょう。また、自分の言葉を確認されることによって、自らの過ちや違和感に気づくこともできます。
問い詰めるのではなく、互いの理解がずれていないかを確かめ、合意の元、先に進むために、上手な訊き方を心がけましょう。
●「聞く」は、耳から入ってくる音声を感じ取り、その内容を判断すること。
心を落ち着かせて耳を澄まして聞いてみると、普段気づかすにいる鳥のさえずりや風の音が聞こえてくると思います。逆に、車の騒音や工場の機械音など常にうるさく嗚っている音は無意識に耳に入らなくなるものです。
仏さまの声や気配も私たちの身のまわりにあふれています。故に仏さまの教えを聞くことを「聞法」というのです。仏さまの声が聞こえるか否かは心もち次第。耳を研ぎ澄ますのも修行です。
「自死・自殺に向き合う僧侶の会」も、この3つの「きく」を意識して活動しています。
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(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員、自死・自殺に向き合う僧侶の会共同代表)
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