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生老病死と向き合う あなたのそばに
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日蓮宗新聞 令和元年9月20日号
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母子の幸せ
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太田喜久子
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母親への寄り添いと守護
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精神科外来に妊婦や子ども連れのお母さんの来院が増えています。子どもを産み、育てていく一時期に母親がうつ病になり易いことは知られ、妊娠早期から母子のメンタルヘルスに関心を向ける時代になりました。
そんな時代、地域ですぺての子どもたちの健やな出生及び成長を願う取り組み事業として、医療・保健・福祉・教育に係る専門家が集まる会があります。精神科外来単独では難しい取り組みも、母子保健と連携すれば妊娠時から支援ができるため、私もその会に参加し、周産期に当たっての地域医療における精神科医の役割を考え始めました。2018年、診療報酬改定でできた初・再診料の妊婦加算は妊婦税と誤解され、凍結になりましたが、赤ちゃんが生まれる前から母親を支援する仕組みを国は作ってくれていました。
そういった仕組みのなか、産科から過換気症状とうつ状態で苦しんでいる妊婦が紹介されてきました。その女性はかつて、先天的に虚弱で24時間医療と介護を要する長女を在宅で5年間見てきましたが、夫に頼んで少しの時間外出した際に子どもを亡くしたことがあったため、悲しみの日々、この症状に苦しむようになりました。
女性は再び、お腹に子を宿したので、亡くなった子への申し訳なさを感じました。長女の喪の時に芽生えた次の命に罪責と恐れと不安をかかえていたのです。しかし、妊娠中から産科と連携し保健師につなぐ仕組みが稼働し、精神科治療を受け入れたので、薬の服用で症状は改善し、あとは妊婦の大きなお腹に安産を願うばかりとなりました。
法華経信仰では、安産・子育ての鬼子母神さまが知られています。陀羅尼品二十六で法華経の行者の守護を釈尊に誓約。日蓮聖人の本尊・大曼荼羅には、鬼子母神と十羅刹女が勧請されています。諸天・守護神たちの大きな力に守られた法華経の法師は陀羅尼呪を唱えるのです。鬼子母神の8の日の湧き立つようなすがすがしいご祈祷の守護が診察室で出会う母子にも届くよう祈願したくなることがあります。母子のこころのケアは偏見と誤解がありましたが母親の不安の方が赤ちゃんの成長を阻害するのです。妊娠早期から母子を支える仕組みを作っています。今日的課題は重症心身障碍児の在宅医療です。
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(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員)
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