|
生老病死と向き合う あなたのそばに
|
日蓮宗新聞 平成29年9月20日号
|
|
継 承
|
村瀬 正光
|
|
親子の絆とこころの継承の重要性
|
|
里芋は、米の渡来より古い時代とも言われ、万葉集にも詠まれています。子孫繁栄を象徴するメデタイ物とされ、古くから儀礼食に用いられてきました。日蓮聖人も檀信徒の方から、里芋を供養の品として何度も受け取っておられます。そこには、子孫繁栄の願いが込められていると思われます。
厚生労働省の『人口動態統計』によれば、平成26年の出生数は約100万人、死亡数は約127万人と少子化社会に突入しています。そうした中で、不妊で悩み不妊治療を行っている方は少なくありません。タイミング指導から始まり、次に人工授精(排卵のタイミングに合わせて、夫の精子を人工的に子宮内に送り込み自然な妊娠を期待する方法)が行われます。人工授精も5回を過ぎると妊娠率が上からないため、生殖補助医療(体外受精、顕微授精)に移行します。日本産科婦人科学会の調査によれば、平成26年の生殖補助医療の総数は約39万件、そのうち出生まで至るのは約12%(5万弱)と、わずかしかありません。しかも生殖補助医療は健康保険適応外で、1回の治療費が20万〜70万円かかります。医療が発達しても、子どもを授かることは容易ではありません。
また、平成26年の妊産婦死亡数は33件あり、現在においても出産は命がけの一大事なのです。私たちがこの世に生を受けているのは、奇跡なのかもしれません。
日蓮聖人は「我が頭は父母の頭、我が足は父母の足、我が十指は父母の十指、我が口は父母の口なり。お釈迦さまの悟り(成道)は父母の悟り(得道)なり」と、いのちを受け継ぐ親子の絆、こころ(信仰)の継承の重要性を説いています。
私たちは先祖から体だけでなく、こころ(信仰)を受け継ぎ、今ここに存在しています。少子化時代へ突入した現在、次世代へいかに繋げていくか、私たちの信仰が問われています。
|
(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク世話人、医学博士)
|
|
|
|