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生老病死と向き合う あなたのそばに
日蓮宗新聞 平成26年11月20日号
気持ちに寄り添う −行動にはわけがある−
林 妙和

認知症患者の尊厳を護る

 残暑厳しい昼下がり、雨傘を抱えて、汗だくで路地をうろうろしている高齢のAさんを見かけ、
 「どちらへお出かけですか?」と尋ねた。木陰に座り、お茶を勧めると、
 「あー美味しい、有難い」
ひと息ついてから、ゆっくり話を聴いた。
 「お好み焼き屋から借りた傘を返したいの…」
 パニック状態は収まったが、かなり疲れた様子。会話から校区と名前が分かり、自宅まで送った。「また、勝手に出て」と言いつつも、Aさんの夫の表情には安堵[あんど]感がみられた。夫の話から人さんは物忘れがあり、急に出かけては帰宅できないことが何度もあることが伺えた。
 デイケアに通うBさん。家族が目を離したすきにいなくなった。関係者総出で夜を徹し探した。
 時間経過とともに心配が募り、涙する家族に寄り添う私も胸が痛んだ。
 2日目、Bさんは刈田の藁の中にうずくまっているところを発見された。農業一筋だったBさんは黄金色に実った稲を見て、稲刈りを思いたって道に迷ったようだ。
 今や身近な病気である認知症は記憶障害などが基盤にあり、周囲の関わり方、置かれた環境や人間関係などさまざまな要因が絡み合って多彩な心の反応や行動が現れる。
 認知症の方一人ひとりに人生の物語がある。
 周囲にとっては困ると思われる言動・行動であっても、それが生じる背景には本人なりの理由があるのでそのことを理解してほしい。
 「認知症だから…」と、決めつけない。
 本人の気持ちに寄り添い、見守り、対応することが大切である。
 しかし、現実はとくに家族・介護者は四六時中向き合い、気が休まらない。
 「鬼嫁は 私だけではなかったと 胸なでおろす 介護者の会」(介護百人一首から)
 介護者の悩み・想いを共有する場も必要である。
 本人・家族を思いやり、介護問題を抱え込ませないために周囲の人にできることは、「あれっ」と思ったら見過ごさないで声をかけ、早めの対応につなげる。また、家族も認知症であることを隠さないほうが良い。
 老いても、病気を持ちながらも尊厳を守り、その人らしく安心して馴染みの環境で暮らしたいと誰もが願う。それも自然なことである。
 今をともに生きる私たちが身近な問題としてどう向き合っていくかを考え、地域で人々が顔の見えるつながりで支え合うことも肝要である。
 (日蓮宗ビハーラ・ネットワーク世話人)
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