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生老病死と向き合う あなたのそばに
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日蓮宗新聞 令和7年4月20日号
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子を残して先立った母
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日高 隆雄
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亡き人への供養は明日の活力につながるから
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幼い子を残して先立つ母の想い、どれほど無念なことでしょう。
40歳代半ばの女性です。腹部膨満と下腹痛で産婦人科を受診した時、卵巣がんがすでに全身に拡がり、手の施しようもない状態でした。シングルマザーで3人の子育てに一生懸命で、自分の身体の変調にかまっている時間などなかったのでしょう。発見が遅れてしまいました。子育て半ばで死んではいられないと副作用に耐えて、がん治療を頑張りました。
しかし治療効果もむなしく、終末期を迎えることになりました。残された時間を知った本人は少しでも子どもだちと一緒に過ごすことを希望し、実家で両親と子どもだちと暮らすことにしました。緩和ケアチームの医療スタッフは実家の環境整備を急ぎました。
がんの進行に伴い、身体はみるみるうちにやせ衰えていきました。短い時間でしたが、彼女にとってはたいへん充実した貴重な時間を過ごすことができたと思われます。最期は子どもたち3人と両親に見守られながら、静かに息を引き取りました。終末期のお母さんを支え続けた高校生の長女は看護師になることを決意し、看護学校へ進学します。歳の離れた小学生の妹と弟を母親代わりにみていくことも決意しているようです。祖父母の協力を得ることにはなりますが、きょうだい3人で力を合わせてがんばっていけるよう応援したいと思います。
楽しいこと、嫌なこと、うれしいこと、悲しいこと、いろんなことがあるでしょう。お題目とともに仏さまになったお母さんに毎日報告すること。それがお母さんの供養になり、自分自身の明日への活力にもなると伝えました。お母さんはいつも子どもたちのそばにいます。道すじを明るく照らしながら見守り続けていることでしょう。
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(日蓮宗ビハーラネットワーク世話人・富山県妙輪寺住職・産婦人科医師)
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