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日蓮宗新聞 令和3年9月20日号
子は財なり
日高 隆雄

やっぱり、がんばって育てていこう

 厚生労働省統計によると令和2年は84万832人の出生数に対して14万5340件の人工妊娠中絶が報告されています。これほど少子化対策が叫ばれている中、妊娠例の約15%がこの世に生を受けることなく亡くなっています。さまざまな宗教観・倫理観や個々の複雑な事情もあるのでしょうが、非常に残念なことです。
 人工妊娠中絶に関して、母体保護法で「身体的および経済的理由」の範囲でと制限されています。妊娠継続が母体の健康を著しく害し、生命を脅かす可能性がある「身体的理由」の場合は致し方ないことですが、実際には、「経済的理由」が拡大解釈されている場合がほとんどです。
 先日、妊娠8週の人が産婦人科外来を受診されました。2人のお子さんがいる35歳の人です。診察室に入ってくる表情は沈んでおり、中絶したい旨の申し出がありました。「自分としては産みだいけれど、夫が3人目は経済的にきつい。中絶しかないと言っている」とのことでした。強引な説得はできませんが、妊娠継続に向けて利用可能な社会的・経済的支援について説明し、夫婦で再度、話し合いをすること、決して性急な決断を下さないことを話しました。複雑な思いや感情もあったのでしょう。このあと患者さんは涙が止まらなくなってしまいました。しばらくして「もう一度、超音波検査をしてほしい。そして、胎児の動画をスマホで撮らせてください」との申し出があり、1分間ほど撮影して帰りました。
 日蓮聖人ご遺文『千日尼御返事』の中に「子にすぎたる財[たから]なし」とあります。子どもは未来を開く大切なたからとし、命の尊さを示しておられます。ヒポクラテス(「医学の祖」と称せられる古代ギリシアの医師)の誓いの中にも「人間の生命を受胎のはじめより至上のものとして尊ぶ」とあ
ります。
 患者さんは2週間後に再診しに来ました。診察室に入ってくるにこやかな表情で妊娠継続の意思が容易にわかりました。夫も「上の2人だけを育てて、この子だけ中絶するのはかわいそうだ。大変だろうけどがんばって育てていこう」と言ってくれたとうれしそうに話してくれました。
(富山県妙輪寺住職・産婦人科医師・日蓮宗ビハーラネットワーク世話人)
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