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生老病死と向き合う あなたのそばに
日蓮宗新聞 令和3年6月20日号
最期まで自分らしく生きたい
宮村 妙洋

おだやかな表情で旅立ち

 緩和ケア病棟で、余命数カ月といった終末期の患者や家族の心のケアに携わっています。
 数年前に夫を亡くし、1人暮らしをしていたA子さんは、末期ガンでした。部屋に伺うとA子さんは「夫が亡くなる頃から、胃の調子がおかしいと思っていたけど、葬儀や法事などで忙しく、受診が遅れてしまいました。療養中は“何で私が?”“どうしてガンに?”と悲しく辛いばかり(涙)。痛くなると恐怖心で早く死にたいと考えていました。また、不安で誰か来てほしい気持ちと、こんなに痩せた姿を見せたくないという、複雑な想いでした。そんな時は、好きなコーヒーを飲みながら松田聖子さんの曲を聴いて、癒やされてました」と苦笑い。
 その後の面談では「私の身体はボロボロ。人の役に立つ臓器はないけど、角膜なら提供できるかも、と考え、アイバンクに登録することにしました」と話してくれました。
 
◆亡くなる2日前の面談
 「いつも気にかけてもらい有り難うございます。こんなに逝けないものなんでしょうかね…。8日は、母の月命日でした。母が迎えに来てくれると思っていたけど…。目が覚めたら9日になっていました。安楽死ができたら良いのに。自分の意志であっても日本ではできないというのは…残念です。もう…私は、1人では何もできなくなってしまい、皆さんから優しく手伝ってもらい有り難いです。良いことばかりの思い出を持って逝けそうなので良かったと思います。エンディングノートも書いています」と話し、A子さんの死生観などを尊重しながら傾聴しました。
 翌日の夜間帯から、痛みが増強し、痛みの緩和と共に意識低下がみられました。緩和ケアチーム員でA子さんの好きだったコーヒーの香りの中で声をかけ、また耳元で、好きだった曲を流しなが
ら寄り添いました。
 まるで、笑ったようなおだやかな旅立ちでした。A子さんの願いであった角膜提供をされ、今頃は誰かの役に立っていることでしょう。
(日蓮宗ビハーラネットワーク会員・
看護師・認定臨床宗教師・スピリチュアルケア師)
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