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日蓮宗新聞 令和2年7月20日号
コロナ禍の現状
太田 喜久子 医師

メンタルの健康を保つ生活の模索始まる

 コロナ感染症は人びとの日常生活を大きく変え、いまだ収束の兆しが見えない。さらにはコロナ感染第2波、第3波が危惧されるなか、今も命を脅かし続け、さらには心理・社会的分野へ被害が広がり続け、生活領域ではメンタルヘルスの危機への警告が出始めている。
 当院では新患来院者の減少と、電話投薬が多くなり、集団活動が核であるデイケアは例年に比して参加者25%減である。全国的にはデイケア閉鎖のところも出ている。地域の精神障がい者を支援する最前線の社会資源デイケアは危機状況に直面しており政府へ診療減収に伴う支援の要望書を出している。
 アルコール依存症、ギャンブル依存症、摂食障害などは当事者集団活動が治療の中核であるが、例会中止で再発者が増えている報告があり、女性と子どもへの暴力(DV)増加の警告情報が出ている。精神科外来ではコロナヘの不安から、突然の気分の落ち込みを感じるコロナ鬱が現れているが、感染への不安、外出自粛などによるストレスからきた反応性うつ伏態であり治療が必要となる。
 来院してきた40歳後半のある女性のケースでは、長男が東京への修学旅行から帰ると母親が身体不調となり長男から感染したと言い張り、長年勤務した会社を休んでいた。さらにはコロナ感染を妄想的に確信し布団から出なくなり、家事炊事ができなくなっていた。夫は妻のうつ病診断が腑に落ちないようであった
が、通院指示し服薬1ヵ月後、うつ気分は安定し意欲が向上したため、日常生活も取り戻し職場復帰を希望している。治療後、コロナ鬱から改善した一例である。
 コロナ禍から派生した子どもや乳幼児、高齢者の受診者も増えている。女性のメンタルヘルスの問題が多く観察される一方で、男性は会社休みが増え、残業が減り身体を整える絶好の機会になっている思いがけない効果が精神科外来コロナ鬱の印象である。これからの日常生活は、メンタルの健康を保つ新しい生活への模索が始まっている。
 中川法政宗務総長から新型コロナウイルスに関する声明文が出され、未来への希望の灯をともすのは信仰心で、お題目によるエネルギーであると書かれている。自我偈[じがげ]は、「自我得仏来[じがとくぶつらい]」で始まり「速成就仏身[そくじょうじゅぶっしん]」で終るが、最初と最後の5字に喜びを感じるのは、自我渇の心を生かしてお題目を唱えれば自らも必ず仏を見ることができ仏となることができるという希望の道を見るからである。
 どのような社会であれば健康で幸せな生活ができるのであろうかとの問いに、例えばコロナ禍で全国民一律に出た特別給付金が国家としてベーシックインカム(最低限所得保障)の取り組みに発展すれば経済的側面の保障・安心が生まれる。自我偈とベーシックインカムを両手にコロナ元年に希望の灯をともせるので
はと思う。
(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員)
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