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生老病死と向き合う あなたのそばに
日蓮宗新聞 令和2年3月20日号
寄り添いと看送り
林 妙和

本人の意思に寄り添う支援の実現には

 「生きているよ〜」。毎回Aさんからの第一声はこの言葉から始まった。
 東日本大震災の起きた年、私は救護室ボランティアとして避難所にいた。出会ったAさんは咳き込み、苦しそうな表情であったが薬も「要らねっ」、診療所にも「行かねっ」と、人との関わりを拒絶していた。そのようなAさんに寄り添い、見守って3日目。「あんたには負けたよ」と受診し、肺炎で入院となった。退院後に面会に来て「苦楽を共にした妻、愛犬、家、すべてを突然失った」、「生まれ故郷にかあちゃんを連れて帰ることに決めたよ」など、胸中を話してくれた。
 Aさんが被災地から離れた後も、主に電話での繋がりが続いた。「楽しみがない」「親戚に迷惑をかけたくね〜」などの内容から孤独な暮らしぶりが伝わって来た。
 寄り添い見守って数年後、「東北支援に行く時に頼みがある」と、Aさん。その願いは自宅跡や妻の見つかった場所などでの慰霊と友人に会うことだった。共に祈った後、Aさんは「かあちゃんが許してくれたように感じた」と、顔は涙に濡れていたが安堵の表情であった。
 その後、持病は悪化していたが、友人との外出の様子や「かあちゃんには釣りの腕前と達者な口には敵わなかった」など冗談を交じえた連絡が度々あった。
 「生きているよ〜」の声のトーンが落ちてきたある日。お見舞いに伺うと「やっとかあちゃんに会えるな〜」「世話になったな、ありがとう」と合掌した。やがて姉や甥、関わった人に看送られて安らかに旅立った。
 Aさんとの出会いから「人間は死んだら終わりではない」という生命観は、愛する故人と再び会えるという希望になり、悲嘆の癒しと死後の安心と救いにつながる。また被災地支援では復興の進捗には差があり、個々のニーズも変化している。地元の現実に目を向け、人びとに寄り添い「今」できることを継続することで担える役割があることを学んだ。
 (日蓮宗ビハーラ・ネットワーク世話人)
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