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生老病死と向き合う あなたのそばに
日蓮宗新聞 令和元年10月20日号
人生の物語に向き合う
林 妙和

本人の意思に寄り添う支援の実現には

 「立派な施設が増えたが、あなたはどう思いますか?」とAさんから質問された。続けて「わしは納得していない。今でも腹が立つ」と…。
 Aさんは脳梗塞を患い片麻婢は残ったが、自宅復帰を目標に病院や老人保健施設でのリハビリに励み、車いすを自操できるまでになり、特別養護老人ホームに移った。しかしそこが自分の「終の住処」であることを知り、ショックと怒りで混乱し、家族を怒鳴り散らした結果、家族とは気まずい関係になってしまった。さらに持病の悪化により死への恐怖や不安が募り、つい妻ヘ八つ当たりしてしまい、妻が顔を見せないのが寂しいと胸の内を吐露し「自分は80余年、家族のためにがむしゃらに働いた人生だったなあ…」と、歩んだ人生の意義を噛みしめるように語った。
 ある日、Aさんが強く墓参りを希望した。施設職員と協力し、妻と一緒に外出する機会を迎えた。
 Aさんは墓前でしばらく合掌し両親に語りかけていた。
 「あの頃、最期までよく看てくれたと父母は感謝していたなあ。キヨも今は歳をとって心臓も悪いし…」と妻を労わる言葉になっていた。
 「病気になり自分の弱さを知り、今まで見えなかったものが大切に思えてきた」とも話す。
 妻はそんなAさんの姿に「苦楽を共にした家族だからこそ、主人の心身の変化に一喜一憂し、別れを想って辛かった」「皆さんのお陰でお互いが穏やかに向き合え、ありがとうの言葉を交わせることができて心が救われた」と涙ぐんだ。
 Aさんとの関わりからやがて迎える終焉を誰と何処でどのように迎えたいか。限りある生を全うするには本人の人生観、価値観、意思を尊重した暮らしであること。施設にいても、状況の変化により揺れ動く本人・家族の心に寄り添い支える。実現には早い段階から双方に関わるさまざまな人・職種が協働してその思いが繋がる連携が望まれる。僧侶もその一員としての役割が不可欠であると実感した。
 (日蓮宗ビハーラ・ネットワーク世話人)
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