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日蓮宗新聞 令和元年8月20日号
新型出生前診断と常不軽菩薩の心
日高 隆雄

生命の選別につながることは許されるのか

 胎児の染色体異常(いわゆるダウン症候群など)を診断する出生前診断は超音波検査・羊水検査などによりすでに行われています。これに加えて、生殖医療技術の進歩は妊婦の血液を調ぺるだけで胎児の染色体異常を高い精度で判定するという新型出生前診断を可能とさせました。米国では、この新型出生前診断を「患者の知る権利を重視し、すぺての妊婦のスクリーニング検査として提供すぺきである」と位置づけています。日本では、この検査を希望する35歳以上の妊婦を対象として一部の医療機関で実施されています。
 出生前診断の本来の目的は、出生前に胎児の状態を把握し、出生後の新生児治療の準備をすること、および胎児に関する情報を夫婦に提供することです。決して異常な胎児を排除するためではありません。しかし、残念ながら、現実はそうなっていません。日本人類遺伝学会の報告によると、出生前診断で染色体異常を認めた妊婦の90%以上が妊娠中絶を選んだとしています。倫理的問題に関する十分な議論もなされずに、「生命の選別」につながるのではという懸念も指摘されるところです。
 法華経の常不軽菩薩品第二十には「我深く汝等を敬う。敢て軽慢せず。所以は何ん、汝等皆菩薩の道を行じて、当に作仏することを得ぺし(私はあなた方を深く敬い、決して軽んじません。あなた方はみな菩薩道により、やがて仏となるからです)」と説かれています。すぺての存在を貴び、あらゆる人を尊敬する常不軽菩薩の姿に人間としての振る舞いの原点を感じます。染色体異常を伴っていたとしても、この世に授かるぺく誕生した尊い生命です。表面にあらわれる姿を偏った固定観念でみることは慎まなければなりません。
 そうこうしている間にも生殖医療技術は急速に進んでおり、新型出生前診断のほかにも次から次へと新たな議論すぺき倫理的問題が出てきています。
(日蓮宗ビハーラネットワーク世話人・産婦人科医師)
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